血液疾患
骨髄検査について
骨髄とは?
血液は赤血球・白血球・血小板の細胞成分と血漿という液体成分からなります。赤血球は酸素を全身に届ける働き、白血球は細菌などの外敵から体を守る免疫の働き、血小板は出血時に血液を固める働きを担います。これら3つの細胞成分は「骨髄」という骨の内部の組織で作られます。
骨髄検査が必要な場合
1.白血病などの血液の腫瘍が疑われる場合
(血液中に腫瘍細胞が存在する場合)
2.血液検査で原因がはっきりしない貧血
3.血中の赤血球・白血球・血小板のうち2成分以上が正常範囲以下に減少している場合
上記の3つの場合、骨髄検査を実施し確定診断を導きます。
骨髄検査までの準備と検査の実際
検査を実施するには全身麻酔が必要です。検査当日の朝は絶食が必要です
(朝8時以降は絶水が必要です)。
骨髄は上腕骨
(腕の骨)と大腿骨
(太ももの骨)から採取します。採取する際に肩と腰の毛刈り
(直径5cm程度)が必要です。毛刈りした皮膚を小さく切開し、針を骨に刺して、骨髄液を吸引します。採取した骨髄液を染色し、顕微鏡で観察し、骨髄の状態を判断します。
検査結果について
検査結果は検査当日にお伝えすることができます。特殊な染色が必要な場合は、追加所見を後日お伝えします。
検査所見はテレビモニターに骨髄の状態を映し出してご説明します。
ハインツ小体性溶血性貧血(たまねぎ中毒)
たまねぎなどのねぎ類には犬・猫に有害な成分が含まれており、その成分は赤血球を破壊します。ねぎ類の食物を食べた犬猫の赤血球は壊れ
(溶血)、貧血が起こります。
原因
たまねぎ、ねぎ、にんにくなどのねぎ類のほか、風邪薬
(アセトアミノフェン)などの薬品類などを誤って飲み込むことにより、犬・猫に有害な成分が溶血を引き起こします。
症状
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査によって診断されます。
治療
・飲み込んで30分以内であれば、吐き出させることが可能です。
・症状があらわれた場合は、有害な成分を薄め、尿に排泄されることを促すために点滴が必要となります。
・症状が急激に進行した場合や重症の場合は酸素吸入、輸血などが必要となります。
予後(今後の見通し)
・多くの場合は数日で回復します。
・重症の場合や治療が遅れた場合は死亡することもあります。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の赤血球を外敵と勘違いして破壊する病気です。赤血球は溶血
(赤血球が壊れて、溶けること)し、貧血が起こります。
原因
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり、発症します。
特発性
(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。
症状
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査によって診断されます。播種性血管内凝固
(DIC)という合併症が起こると、血栓が作られ、さまざまな臓器に障害が起こることや、出血時に血が止まらなくなるなど非常に重篤な状態に陥ります。
治療
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し、定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療
(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。犬では合併症である血栓形成の予防のための薬剤を併用されます。
予後(今後の見通し)
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は30~70%と報告されています。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります。
免疫介在性血小板減少症(IMTP)
何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の血球
(赤血球、白血球、血小板)を外敵と認識して破壊する病気です。破壊される血球によって、それぞれ症状が異なります。赤血球と血小板が同時に破壊される場合を「エバンス症候群」、3つすべての血球が破壊される場合を「汎血球減少症」といいます。
原因
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり発症します。猫では猫白血病ウイルス
(FeLV)感染が引き金になることが多いと言われています。
特発性
(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。
症状
赤血球が破壊される場合は、貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。白血球が破壊される場合は、抵抗力が低下し、細菌やウイルス感染を起こしやすくなる、発熱によって元気や食欲が低下するなどの症状を示します。血小板が破壊される場合は、出血時に血が止まりにくくなる、打身などで紫斑
(赤紫色のあざ)が出来やすくなることや、打撲によって脳出血や内臓出血が起こり、さまざまな症状を引き起こすこともあります。診断には血液検査が必須であり、骨髄の検査が必要となる場合もあります。播種性血管内凝固
(DIC)という合併症が起こると、血栓が作られ、さまざまな臓器に障害が起こることや、出血時には血が止まらなくなるなど非常に重篤な状態に陥ります。
治療
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療
(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。犬では合併症である血栓形成の予防のための薬剤が併用される場合もあります。
予後(今後の見通し)
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は30~70%と報告されています。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります。
赤芽球労癆(PRCA)・非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)
赤血球は造血幹細胞という血液細胞の大本から何度も細胞分裂し、赤芽球を経て赤血球へと成熟・増殖していきます。何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の赤芽球などの赤血球前駆細胞を外敵と認識して破壊する病気です。赤芽球労癆は成熟段階の前半で赤血球前駆細胞が、非再生性免疫介在性貧血は成熟段階の後半で赤芽球が破壊されます。赤血球は成熟できず、貧血が起こります。
原因
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり、発症します。
特発性
(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。
症状
貧血によって、元気や食欲だ低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。血液検査によって貧血が確認されます。診断には骨髄検査が必須となります。
治療
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し、定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療
(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。
予後(今後の見通し)
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は20~50%程度であり、難治性の病気です。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります
バベシア症
マダニが寄生すると、マダニの体内に潜んでいるバベシアという小さい寄生虫が犬の体内に入り込み、赤血球を破壊し、貧血を引き起こすことがあります。バベシアが寄生し、貧血に陥る病気をバベシア症といいます。
原因
マダニが寄生し、犬の血を吸うときに、マダニの体内からバベシアが犬の体内に侵入し、病気を引き起こします。マダニすべてにバベシアが潜んでいるわけではありません。
症状
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査や遺伝子検査によって診断されます。
治療
・バベシアを駆除する薬
(内服薬、または注射薬)を投与し、治療します。
・症状が急激に進行した場合や重症の場合は酸素吸入、輸血などが必要となります。
予後(今後の見通し)
・薬の効果は様々ですが、多くの場合は難治性です。薬が効いても、バベシアを完全に駆除できることはまれです。ほとんどすべての場合、薬を止める、または少なくすると再発します。
・重症の場合や治療が遅れた場合は死亡率が高くなります。
予防
マダニが寄生しないようにスポット薬などで予防することが重要です。散歩時は草むらなど、マダニが好む場所に入らないようにしましょう。