猫と慢性腎不全
2019年08月31日
獣医師の池田です。
秋に向かっていますが、まだまだ暑い日は続きますね。
皆様のわんちゃん猫ちゃんの調子はどうでしょうか。
この季節、気温や湿度の変化で体調を崩す動物たちも多いです。
夏は気温が高く、体の水分はどんどん失われていくため、今まで通りの飲水量では体に必要な水分は補えなくなってしまいます。
引き起こされる脱水は多くの臓器に障害をもたらしますが、中でも腎臓はたくさんの水分(血流量)が必要とされるため、障害はほかの臓器と比べ甚大です。
腎臓は、人で体重のたった0.3%程の重量ですが、その血流量はなんと20%にものぼるといわれる、いわば「水の臓器」なのです。
今回はそんなお水を絡めた「猫と慢性腎不全」をテーマに、病気と予防について書こうと思います。
猫好きなら外せないテーマです。
猫が水を飲むお姿は視覚的にはもちろん、健康面においてもありがたくも大切な瞬間なのです。
猫はもともとアフリカの砂漠地帯などに生息していたリビアヤマネコを家畜化した動物といわれています。
そのため、通常猫は体の水分を守るために濃い尿排出する機能が優れています。
ただ乾燥地帯で生きる分、軽度の脱水に対してはやや鈍感な動物といえます。
高齢猫は脱水していることがとても多い印象です。
高齢猫の腎不全の罹患率はとても高く、あなたの家の猫ちゃんも他人事ではありません。
腎不全は、高齢化している猫の寿命を考えるともはや宿命のような病気といえるのです。
慢性腎不全に陥ると、腎臓は尿を濃くする機能が低下してしまい、薄い尿がたくさん出て行ってしまいます。
つまり、ただでさえ喉が渇きにくい猫ちゃんの体からどんどん水分がぬけていってしまうわけです。
脱水は進行し、血流が必要な腎臓をさらに悪化させてしまうという悪循環が生じます。
ではどうやって水分摂取量を増やせばいいのでしょうか。
自宅でできる飲水量を増やすための工夫をいくつか紹介します。
① 1日2、3回お水を交換して、いつでも新鮮なお水を飲めるようにする
② 静かな場所に水飲み場を何ヵ所か設ける
・・・高齢猫では関節炎などの理由であまり動けないこともあります。静かで、猫ちゃんがリラックスできる場所にポンとお皿をセットしましょう。
③ 水の容器を変更する
・・・幅広のお皿を用意して、高い位置に置いてあるほうが飲みやすいことがあります。何かの台に容器を乗せてもいいかもしれません。
④ 容器をこまめに洗う、周辺を清潔に保つ
・・・猫ちゃんは基本的に凄く綺麗好きです。
⑤ 水の循環装置をおいてみる
・・・流れる水や、蛇口から滴る水が好きな猫ちゃんも多いです。
⑥ 食事の回数を増やし(1日量を分ける)、飲水の機会を増やす
・・・食事の後にお水を飲む子もたくさんいます。
⑦ 食事に水分を加える
・・・ドライフードを水や動物用ミルクでふやかして与える。
⑧ 食事をウェットフードに変更する
・・・ウェットフードの水分は70~80%であり(ドライフードは5~10%程)、ウェットフードを十分量摂取できれば、自分で飲水するべき水分を大きく減量できるという報告もあります。
人間でさえ脱水症状に注意する必要のあるこの季節、水を飲む量が足りなくなり脱水してしまうのは動物たちでも同じです。
特に糖尿病、腎不全などの病気を患っていることの多い高齢猫にとって脱水は、時に命の引き金を引くこともあります。
少しでも長い間、健康でそばにいてもらうために、猫ちゃんの食事、飲水量に是非一度注目しなおしてみることをオススメします!
獣医師
池田