犬の病気

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血液疾患

骨髄検査について

骨髄とは?
血液は赤血球・白血球・血小板の細胞成分と血漿という液体成分からなります。赤血球は酸素を全身に届ける働き、白血球は細菌などの外敵から体を守る免疫の働き、血小板は出血時に血液を固める働きを担います。これら3つの細胞成分は「骨髄」という骨の内部の組織で作られます。

骨髄検査が必要な場合
1.白血病などの血液の腫瘍が疑われる場合(血液中に腫瘍細胞が存在する場合)
2.血液検査で原因がはっきりしない貧血
3.血中の赤血球・白血球・血小板のうち2成分以上が正常範囲以下に減少している場合
上記の3つの場合、骨髄検査を実施し確定診断を導きます。

骨髄検査までの準備と検査の実際
検査を実施するには全身麻酔が必要です。検査当日の朝は絶食が必要です(朝8時以降は絶水が必要です)。
骨髄は上腕骨(腕の骨)と大腿骨(太ももの骨)から採取します。採取する際に肩と腰の毛刈り(直径5cm程度)が必要です。毛刈りした皮膚を小さく切開し、針を骨に刺して、骨髄液を吸引します。採取した骨髄液を染色し、顕微鏡で観察し、骨髄の状態を判断します。

検査結果について
検査結果は検査当日にお伝えすることができます。特殊な染色が必要な場合は、追加所見を後日お伝えします。
検査所見はテレビモニターに骨髄の状態を映し出してご説明します。

ハインツ小体性溶血性貧血(たまねぎ中毒)

 たまねぎなどのねぎ類には犬・猫に有害な成分が含まれており、その成分は赤血球を破壊します。ねぎ類の食物を食べた犬猫の赤血球は壊れ(溶血)、貧血が起こります。

<原因>
たまねぎ、ねぎ、にんにくなどのねぎ類のほか、風邪薬(アセトアミノフェン)などの薬品類などを誤って飲み込むことにより、犬・猫に有害な成分が溶血を引き起こします。

<症状>
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査によって診断されます。

<治療>
・飲み込んで30分以内であれば、吐き出させることが可能です。
・症状があらわれた場合は、有害な成分を薄め、尿に排泄されることを促すために点滴が必要となります。
・症状が急激に進行した場合や重症の場合は酸素吸入、輸血などが必要となります。

<予後(今後の見通し)>
・多くの場合は数日で回復します。
・重症の場合や治療が遅れた場合は死亡することもあります。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の赤血球を外敵と勘違いして破壊する病気です。赤血球は溶血(赤血球が壊れて、溶けること)し、貧血が起こります。

<原因>
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり、発症します。
特発性(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。

<症状>
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査によって診断されます。播種性血管内凝固(DIC)という合併症が起こると、血栓が作られ、さまざまな臓器に障害が起こることや、出血時に血が止まらなくなるなど非常に重篤な状態に陥ります。

<治療>
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し、定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。犬では合併症である血栓形成の予防のための薬剤を併用されます。

<予後(今後の見通し)>
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は30~70%と報告されています。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります。

免疫介在性血小板減少症(IMTP)

 何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の血球(赤血球、白血球、血小板)を外敵と認識して破壊する病気です。破壊される血球によって、それぞれ症状が異なります。赤血球と血小板が同時に破壊される場合を「エバンス症候群」、3つすべての血球が破壊される場合を「汎血球減少症」といいます。

<原因>
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり発症します。猫では猫白血病ウイルス(FeLV)感染が引き金になることが多いと言われています。
特発性(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。

<症状>
赤血球が破壊される場合は、貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。白血球が破壊される場合は、抵抗力が低下し、細菌やウイルス感染を起こしやすくなる、発熱によって元気や食欲が低下するなどの症状を示します。血小板が破壊される場合は、出血時に血が止まりにくくなる、打身などで紫斑(赤紫色のあざ)が出来やすくなることや、打撲によって脳出血や内臓出血が起こり、さまざまな症状を引き起こすこともあります。診断には血液検査が必須であり、骨髄の検査が必要となる場合もあります。播種性血管内凝固(DIC)という合併症が起こると、血栓が作られ、さまざまな臓器に障害が起こることや、出血時には血が止まらなくなるなど非常に重篤な状態に陥ります。

<治療>
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。犬では合併症である血栓形成の予防のための薬剤が併用される場合もあります。

<予後(今後の見通し)>
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は30~70%と報告されています。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります。

赤芽球労癆(PRCA)・非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)

 赤血球は造血幹細胞という血液細胞の大本から何度も細胞分裂し、赤芽球を経て赤血球へと成熟・増殖していきます。何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の赤芽球などの赤血球前駆細胞を外敵と認識して破壊する病気です。赤芽球労癆は成熟段階の前半で赤血球前駆細胞が、非再生性免疫介在性貧血は成熟段階の後半で赤芽球が破壊されます。赤血球は成熟できず、貧血が起こります。

<原因>
二次性:感染症や腫瘍に伴って免疫に異常が起こる場合、ワクチン接種が引き金になる場合など何らかのきっかけによって免疫の異常が起こり、発症します。
特発性(原発性):原因がはっきりせず、突然免疫の異常が起こり、発症します。

<症状>
貧血によって、元気や食欲だ低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。血液検査によって貧血が確認されます。診断には骨髄検査が必須となります。

<治療>
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し、定期的な血液検査をしながら経過を観察します。症状が急激に進行した場合や重症の場合は入院治療(酸素吸入、即効性の薬剤投与、点滴、輸血など)が必要となります。

<予後(今後の見通し)>
二次性の場合は原因となる病気の治療が成功すれば、完治が望めます。特発性の場合は、初期治療に反応すると長期生存が期待できます。初期治療に対する反応が悪い場合は死亡率が高くなります。初期治療に対する反応率は20~50%程度であり、難治性の病気です。薬を中断また減量後、再発する危険性があり、定期的な血液検査が必要となります

バベシア症

 マダニが寄生すると、マダニの体内に潜んでいるバベシアという小さい寄生虫が犬の体内に入り込み、赤血球を破壊し、貧血を引き起こすことがあります。バベシアが寄生し、貧血に陥る病気をバベシア症といいます。

<原因>
マダニが寄生し、犬の血を吸うときに、マダニの体内からバベシアが犬の体内に侵入し、病気を引き起こします。マダニすべてにバベシアが潜んでいるわけではありません。

<症状>
貧血によって、元気や食欲が低下します。舌や歯茎、その他の粘膜の色が白っぽくなります。黄疸が出ることもあります。尿の色が濃くまたは赤色になることもあります。血液検査や遺伝子検査によって診断されます。

<治療>
・バベシアを駆除する薬(内服薬、または注射薬)を投与し、治療します。
・症状が急激に進行した場合や重症の場合は酸素吸入、輸血などが必要となります。

<予後(今後の見通し)>
・薬の効果は様々ですが、多くの場合は難治性です。薬が効いても、バベシアを完全に駆除できることはまれです。ほとんどすべての場合、薬を止める、または少なくすると再発します。
・重症の場合や治療が遅れた場合は死亡率が高くなります。

<予防>
マダニが寄生しないようにスポット薬などで予防することが重要です。散歩時は草むらなど、マダニが好む場所に入らないようにしましょう。

皮膚科

犬のアレルギー性皮膚炎

<アレルギー性皮膚炎とは>
動物の体は細菌などの外敵に対して、免疫という武器で対抗し体の安全・健康を守っています。アレルギー体質のワンちゃんは何らかのきっかけで免疫が誤って自分自身の体を攻撃してしまい、皮膚のかゆみを起こします。これがアトピー性皮膚炎です。そのきっかけはノミに刺される、何かを食べる、花粉やハウスダストを吸い込むまたは体に付着するなど様々で、きっかけとなる成分をアレルゲンといいます。厳密にはノミがアレルゲンの場合をノミアレルギー、食物がアレルゲンの場合を食物アレルギーといい、アトピー性皮膚炎と区別します。アトピー性皮膚炎は多くの場合、いくつかのアレルゲンが原因となります。

<アレルギー性皮膚炎のチェックシート>
① 柴犬、シーズー、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ウエストハイランドホワイトテリア、シェットランドシープドッグ、ミニチュアシュナウザー、ボストンテリア、フレンチブルドッグ、パグ、ラサアプソ、ワイアーフォックステリア、ケアンテリア、スコッチテリア、ダルメシアン、セッター犬種 のいずれかの犬種である。
② 目の周囲、口の周囲、耳の中、脇の下から首、内股、四肢の先・指の間のいずれか、またはいくつかの場所に赤みがある。ひどい場合は毛が抜けたり、ブツブツができたり、ジュクジュクしている。
③ 体のどこかがかゆい。
④ 皮膚の症状は経過が長い、または良くなったり悪くなったりを繰り返す(半年以上)。
⑤ 兄弟や親子にも同じような症状のワンちゃんがいる。
⑥ 3歳までに症状が出た。
⑦ 症状に季節性がある(多くは夏から秋に悪化する)。
⑧ よく下痢や嘔吐をする(胃腸炎)。
⑨ 目が赤い、または涙が多い(結膜炎)。
⑩   ノミの予防をしていない。
①~⑤は2点、⑥-⑩は1点です。5点以上であればアトピー性皮膚炎の疑いが強いです。診察を受けていただくことをお勧めします。また、血液検査でアレルゲンの特定も可能です。

<どうやったら治るの?>
アトピーのワンちゃんは多数のアレルゲンに対して体が反応し症状が出るので、そのすべてを回避することは難しく、またアレルギーは体質の問題なので完治することはありません。しかし、症状を和らげ、健康な皮膚の状態に戻すことは可能です。
治療はまず、回避できるアレルゲンは回避することが基本になります
①ノミの駆除・予防
*主にスポットタイプの予防薬を使います。(1ヶ月に1回)
②療法食(アレルゲンが少なく、炎症を抑える効果のあるドッグフード)
*約10種類のアレルギー用療法食があります。サンプルもございます。
*アレルギーのワンちゃんが食べてもいいおやつもあります。
③シャンプー(体についたアレルゲンを洗い流す。皮膚を保湿し、皮膚バリアを強化する。)
*ガーデン動物病院では、皮膚のコンディションに合わせた薬用シャンプーを使った、薬浴を承っております。ワンちゃんの皮膚のコンディションに合ったシャンプーを購入していただき、ご自宅での薬浴も可能です。(週に1回前後)
かゆみが強い、皮膚の状態が悪い場合はお薬で症状をやわらげます
4.薬物療法(主に飲み薬 場合によっては塗り薬)
*症状が重い時はステロイド剤で炎症を抑えます。
*ステロイド剤は非常に良く効く薬ですが、症状が落ち着いても急に薬をやめるとすぐに再発します。獣医師の判断で
少しずつ薬の量を減らしてから薬をやめます。ステロイド剤を長期間、大量に飲ませ続けると副作用によって健康を害する恐れがあります。
*ステロイド剤の作用を補助するため、またはステロイド剤を止めた後の再発防止のために抗ヒスタミン剤も有効です。
*弱くなった皮膚に感染したバイ菌を抑える(抗生剤・抗真菌剤)。
*インターフェロン療法、免疫抑制剤の投与なども実施可能です。
①ノミの駆除・予防(毎月)② アレルギー用のフードへの変更③ シャンプー(週に2回から月に1回)が治療の三本柱となり一生涯つづけます。これらは副作用がなく安全に続けられますが、即効性がなく効果が出始めるのに1~2ヶ月かかってしまいます。
非常にかゆみが強い場合や皮膚の状態が悪い場合は飲み薬を使います。薬を使ってもかゆみが軽減するのに約3日、皮膚の見た目が改善し始めるのには最低1~2週間はかかります。

膿皮症

 膿皮症とは細菌が感染することによって起こる皮膚炎です。皮膚表面の膿皮症を浅在性膿皮症(センザイセイノウヒショウ)、深部の膿皮症を深在性膿皮症(シンザイセイノウヒショウ)といいます。発生頻度の高い浅在性膿皮症について記載します。

<発生>
・免疫抑制剤の服用、子犬、高齢犬、体調不良などで免疫力が低下している状況で、本来皮膚炎を引き起こさない皮膚や被毛の常在菌が過剰に繁殖し皮膚炎を引き起こします。
・アトピー性皮膚炎などの他の皮膚炎で弱っている皮膚でも常在菌が繁殖し(二次感染)、皮膚炎を悪化させることもあります。

<症状>
・初期症状は皮膚表面の丘疹(にきびのような湿疹)と痒みです。丘疹は治癒して消えることもありますが、治癒せずに皮膚の赤みが円形に広がり、表皮(皮膚の表面)がはがれることもあります(表皮小環)。はがれた表皮などはフケとなり、皮膚にしつこく残ることがあります。
・かゆみが強く、自分で掻いたり舐めたりすることで、皮膚炎が悪化し、ジュクジュクすること(糜爛:ビラン)もあります。
・皮膚炎が慢性化すると、皮膚が硬くなることや、黒いシミ(色素沈着)ができることもあります。

<治療>
・抗生物質の内服薬が治療の中心です。
・抗菌シャンプーや抗生物質の外用薬を併用します。
・二次感染の場合は元となる皮膚疾患の治療が必要です。

<予後(今後の見通し)>
・適切な治療を行えば、1~2週間で治癒します。
・免疫抑制剤の影響、体調不良などが免疫力を低下させている場合は、治癒するまでに時間がかかることや、再発することがあります。
・二次感染の場合は元となる皮膚疾患の治療が成功しなければ、治療が困難となります。

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミは吸血部位の湿疹や痒みの原因となるだけではなく、アレルギー反応を引き起こし、全身性の湿疹や痒みを引き起こすノミアレルギーを引き起こすことがあります。

<発生>
初夏から秋ごろの高温・多湿な時期に多発します。屋外に出る犬猫や他の動物と接触する機会の多い犬猫は発症のリスクが高くなります。

<症状>
首、背中から尾にかけて湿疹、フケ、細かいカサブタ、皮膚の発赤、強いかゆみ、脱毛などの症状が見られます。細菌などの二次感染によって皮膚炎が悪化することもあります。
犬ではアトピー性皮膚炎を併発している場合があり、ノミを駆除しても症状が緩和しないことが
あります。
猫ではノミによるアレルギー反応が引き金となる好酸球性肉芽腫症候群によって口の周囲や腹部、後肢などに皮膚病変を引き起こすこともあります。

<治療>
フロントラインプラスやコンフォティス錠などのノミ駆除薬でノミを駆除します。完全にノミが駆除できた後も、予防のために同じ薬剤を定期的に投与し、再発を防止する必要があります。
同時に、アレルギー反応を抑えるために抗炎症薬の内服薬を2週間前後投与する必要があります。二次感染を伴う場合は抗生物質が必要になります。アトピーを併発している場合は、長期的な管理が必要となります(別紙参照)。

<予後(今後の見通し)>
・適切な治療を行えば2週間前後で治癒します。
・ノミ予防を行わなければ、再発の危険性が高くなります。
・アトピーを併発している場合は、長期的な管理が必要となります。

毛包虫(アカラス・ニキビダニ)症

毛包虫とは毛穴の中に寄生する眼に見えない小さなダニであり、犬や猫の皮膚炎を
引き起こします。体の一部にのみ発症する①限局性毛包虫症と、全身に広がった②全身性毛包虫症に分けられます。

<発生>
毛包虫は生後数日以内に母親から感染し、常在寄生虫として感染動物と共存します。1歳未満の子犬、薬物投与、慢性疾患などによる体調不良などで免疫力が低下した時に、共存状態であった毛包虫が増殖し、皮膚炎を引き起こします。感染動物との接触では感染しません。

<症状>
①限局性毛包虫症の初期病変は湿疹やフケを伴わない、きれいな脱毛であり、痒みもありません。毛穴の黒ずみが見られることもあります。
②全身性毛包虫症に移行すると、脱毛は広がり、フケ、脂漏(ベタベタした脂っぽい皮膚)、毛穴に発生する黒い湿疹などが見られ、痒みを伴います。

<治療>
①限局性毛包虫症は無治療でも自然治癒することが多いですが、1週間に1回程度のダニ駆虫剤の注射や外用薬で治療することもあります。
②全身性毛包虫症は1週間に1回程度のダニ駆虫剤の注射、毎日~3日に一回程度の内服薬、外用薬、薬浴などのいくつかを併用して治療します。免疫力を低下させている併発疾患の治療も重要です。重症や難治性の場合は、薬浴を頻繁に行う必要があります。

<予後(今後の見通し)・注意>
① 1歳未満で発生した限局性包虫症は90%が2ヶ月以内に自然治癒します。
②成犬や高齢犬に発生する全身性包虫症は慢性疾患による免疫力の低下が関与していることが
多く、難治性・再発性であることが多いです。

疥癬(カイセン)症

疥癬とは眼に見えない小さなダニ(布団やじゅうたんなどにいる家ダニとは異なります)であり、犬や猫の皮膚に感染し、強いかゆみを伴う皮膚炎を引き起こします。人間にも感染することがあります。

<発生>
犬・猫や野生動物などの感染動物との接触によって感染します。子犬や子猫、高齢の犬猫、免疫抑制剤の服用や体調不良などで免疫力が低下している動物での感染が多く見られます。屋外生活の猫やペットショップ・ブリーダーなどにいる子犬・子猫は他の動物と接触する機会が多く、感染のリスクが高くなります。

<症状>
耳の周囲、肘(ヒジ)、足首などに感染することが多く、強いかゆみ、皮膚が赤くなる、乾燥したフケを特徴とします。

<治療>
・ダニの駆虫剤を1週間に1回、計4回程度注射することで治癒します。
・重症の場合は内服薬や薬浴、外用薬などを併用して治療します。

<予後(今後の見通し)・注意>
・軽症の場合は注射のみの治療によって、1ヶ月以内に治癒します。
・重症例でも適切に治療を行えば、多くの場合2ヶ月以内に治癒します。
*治療を途中で中断すると、再発や慢性化することがあるので、指示通り最後まで治療を継続する必要があります。
*人間や他の動物にも感染する可能性があるため、過度のスキンシップは避け、感染動物から落ちた被毛やフケは掃除機などで取り除き、手洗いなどの衛生管理は十分に行ってください。

免疫介在性皮膚疾患

細菌やウイルス感染などから体を守る働きを免疫といい、その免疫の働きの異常によって自分の体を傷つける病気を免疫介在性疾患と言います。免疫異常による皮膚炎を「免疫介在性皮膚疾患」と言います。アレルギーも広い意味では免疫介在性皮膚疾患のひとつですが、食物やハウスダスト・花粉・ノミなど環境中のアレルゲンに対して、誤った免疫反応を起こし発症する場合をアレルギーと言います。一般的には原因不明の免疫異常によって発症する皮膚炎を免疫介在性皮膚疾患と言います。免疫介在性皮膚疾患には「天疱瘡:テンポウソウ」「エリテマトーデス」「無菌性結節性皮下脂肪織炎」「多形紅斑」「中毒性皮膚壊死症」「皮膚血管炎」「薬疹」などがあります。

<発症>
いずれの疾患も発生頻度は高くありませんが、天疱瘡が免疫介在性皮膚疾患の中ではもっとも発生頻度が高く、秋田犬やチャウチャウで好発します。エリテマトーデスはシェパード、コリー、シュエルティーで、無菌性結節性皮下脂肪織炎はミニチュアダックスで好発します。

<症状>
・眼の周囲、口の周囲、鼻の周囲、肉球、爪の生え際、肛門周囲など皮膚と粘膜の境界部分が赤くなる、
湿疹、フケ、カサブタなどが見られ、進行すると潰瘍(ただれた様にジュクジュクする)になります。
・無菌性結節性皮下脂肪織炎は背中から腰に大小様々なシコリができ、シコリに穴が開き排液していることもあります。
・痒みはある場合とない場合があります。
・炎症が皮膚だけにとどまらず、発熱がみられる場合や、血液異常や腎炎などを併発する場合もあります。
・診断には病理検査が必要であり、麻酔をかけて一部の皮膚を切除し、検査センターに検査を依頼します。

<治療>
・免疫抑制剤の内服薬で治療します。
・症状が皮膚だけにとどまらず、元気や食欲が低下している場合は入院が必要な場合があります。

<予後(今後の見通し)>
・いずれの場合も一生涯の間、免疫抑制剤の投与が必要となることが多く、薬の反応が悪い場合や、薬の副作用が強く出る場合は病気の管理が難しくなります。
・症状が皮膚にとどまらず、全身に炎症による症状が出ている場合は命にかかわることもあります。

外耳炎

鼓膜よりも外側の耳道(耳の穴)を外耳道といい、外耳道の上皮(耳の穴の壁の部分)に起こった炎症を外耳炎といいます。耳が赤くなる・かゆい・耳垢が多いなどの症状がみられます。

<発生>
・耳が垂れている犬は耳が立っている犬よりも多く発生します。
・6月から9月ごろの高温多湿の時期に悪化することが多くなります。
・原因の多くは、アトピー体質に関連したものであり、アトピーによって弱った外耳道上皮に細菌や酵母菌が繁殖し、炎症を悪化させます(柴犬、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、シーズー、ウエスティなどで多発)。
・抵抗力の弱い子犬・子猫、屋外の猫などでは耳ダニ感染による外耳炎が起こります。
・その他、脂漏体質(脂っぽいベタベタした皮膚、乾燥したフケの多い皮膚の体質)に関連したもの(コッカースパニエルやシーズーなどで多発)、異物が耳道に入り込むことが原因となる場合もあります。

<症状>
・耳垢が多い、耳道が赤い・腫れる、耳が痒いなどが初期症状として見られます。
・慢性化すると、耳道は硬くなりふさがることもあります。

<治療>
*アトピー体質が関連している場合は、アトピーの治療と耳洗浄、点耳薬の投与を行います。
*脂漏体質が原因の場合は定期的な耳洗浄で管理します。
*アトピー体質や脂漏体質が原因の外耳炎が慢性化し、耳道が硬く腫れてふさがってしまうと、手術が必要になります。
*耳ダニが原因の場合は1週間に1~2回の耳洗浄を最低4週間とダニを駆除するスポット薬や注射で治療します。
*異物が原因の場合は異物を取り除く必要があります。

<耳洗浄の方法>
① 耳洗浄専用の洗浄液数滴を外耳道に入れ、耳の付け根あたりをよく揉んで洗浄液を耳道の奥まで浸透させます。
② 頭を振って洗浄液を出させ、ティッシュペーパーなどで耳道の外に出てきた耳垢をふき取ります。
③ この作業を数回繰り返します。耳のヒダなどに残った耳垢を綿棒で軽く取り除きます。
(注意)綿棒で耳道の奥を掃除すると、耳道が傷つくことがあるので危険です。

<予後(今後の見通し)>
アトピー体質や脂漏体質が関連している場合は再発を繰り返すことが多く、一生涯治療が必要になります。
耳ダニや異物が原因の場合の予後は良好です

耳血腫(ジケッシュ)

耳介(耳の垂れ下がった皮膚の部分または、耳の立った皮膚の部分)には内部に耳介軟骨(ジカイナンコツ)があり、その軟骨には小さい無数の穴があって血管が通っています。「耳血腫」とは、物理的な刺激またはその他の原因によって、耳介内部の血管が破壊されて内出血を起こしたため、耳介内部に血液や血液を多く含んだ液体が貯留する病気です。

<原因>
正確な原因はわかっていませんが、外耳道(鼓膜よりも外側の耳の穴)、耳介、またはその周囲の炎症、腫瘍、異物、寄生虫感染などによって、頭を激しく振る事や耳を引っ掻くことなどによる物理的な刺激が原因となり、発症することが多いようです。
アレルギーが発症に関与していることや、原因がまったくわからないこともあります。

<症状>
耳介部分が大きく腫れあがり、ぶよぶよと波動感があります。耳の違和感によって、頭を激しく振る、耳を引っ掻くなどの症状が見られます。

<治療>
・全身麻酔下での外科手術によって、耳介の皮膚を切開して液体を排出させ、液体が
貯まっていたスペースをふさぐように耳介の表裏を縫い合わせます。
・再発率の危険性はありますが、局所麻酔下(または無麻酔)で、耳介の切開による液体の排出または注射器での液体吸引と、包帯による圧迫を行う方法があります。しばらくの間、エリザベスカラーを装着します。

<予後(今後の見通し)>
全身麻酔下での切開と縫合による方法は成功率が高く、局所麻酔下での切開と圧迫による方法は成功率が50%程度です。
いずれの方法でも3週間程度、縫合また包帯による圧迫を続ける必要があります。慢性的な外耳炎や腫瘍などの原因を取り除けなければ、再発の可能性は十分にあります。

皮膚糸状菌症(ヒフシジョウキンショウ)

皮膚糸状菌症とは皮膚糸状菌という真菌(カビ)の感染によって起こる皮膚炎であり、人間の水虫に似た皮膚疾患です。皮膚だけではなく爪にも感染します。

<発生>
・皮膚糸状菌は土壌などの環境中に存在し、土を掘るときなどに感染します。
・感染動物との接触によっても感染します。
・子犬や子猫、高齢の犬猫、免疫抑制剤の服用や体調不良などで免疫力が低下している動物での感染が多く見られます。

<症状>
・顔や四肢の先端に発症しやすいですが、全身に発症する可能性があります。円形の脱毛とフケにはじまり、周辺に広がります。
・慢性化するとフケがひふにこびり付き、硬くなります。かゆみは強くありません。
・診断には皮膚糸状菌を培養する検査が必要であり、結果が出るまでに10日前後かかります。

<治療>
・抗真菌剤の内服薬が治療の中心となります。2~3週間の投薬で改善し、さらに2週間投薬を継続し、真菌を完全に殺します。
・抗真菌シャンプーや外用薬も併用します。

<予後(今後の見通し)・注意>
・適切な治療を行えば、2~3週間程度で皮膚病変は改善し、被毛は1~2ヶ月ではえそろいます。治療を途中で中断すると再発しやすくなるため、注意が必要です。
・土壌からの感染が疑われる場合は、散歩コースを変えるなど、再感染を防ぐ必要があります。
・皮膚糸状菌症は人間や他の動物にも感染する可能性があるため、過度のスキンシップは避け、寝床などの消毒、手洗いなどの衛生管理は十分に行ってください。

腫瘍科

リンパ腫(多中心型リンパ腫)

リンパ腫は犬の血液・リンパ系腫瘍で最も発生頻度が高い腫瘍であり、顎の下、肩の前、膝の裏などのリンパ節が腫れ、末期になるまでほとんど症状を示さない特徴があります。腫瘍細胞がリンパや血液によって全身に広がるため、手術による治療は効果が低く、抗がん剤による治療が必要となります。抗がん剤は約70%の反応率を示し、腫瘍は肉眼的に消えてなくなりますが、腫瘍細胞は完全に死滅することは無く、数ヵ月後には再びリンパ節が腫れてきます。治療の目的は完治ではなく、腫瘍をできるだけ抑え、健康に、快適に長生きすることになります。

<発生・シグナルメント>
・発生には遺伝的要因と環境的要因(除草剤、磁場、塗料など)の両方が作用していると考えられている。
・発生率は近年増加傾向にある。中年齢での発生が多い。
・ボクサー、ブルドッグ、ブルマスチフ、Gレトリバー、ロットワイラーなどの犬種で発生頻度が高い。

<症状>
・リンパ節(顎の下、肩の前、内股、膝の裏など)の腫れ。
・臨床症状を示すことは少ない(外見上は健康)。
・病状が進行すると衰弱、抑うつ、食欲不振、嘔吐、下痢などがみられる。
・末期には腫大したリンパ節による気道圧迫、悪液質(栄養を腫瘍細胞にとられ痩せている状態)、免疫不全などの症状がみられる。

<ステージ分類(腫瘍の進行状況)>
Ⅰ:単一リンパ節または単一臓器におけるリンパ系組織に限局した浸潤
Ⅱ:複数のリンパ節に限局した浸潤 扁桃への浸潤がある場合もない場合も含む
Ⅲ:全身のリンパ節への浸潤
Ⅳ:肝臓あるいは脾臓への浸潤 全身のリンパ節浸潤を認めない場合も含む
Ⅴ:血液、骨髄、その他の部位への浸潤
サブステージa:臨床症状なし b:臨床症状あり

<診断>
・リンパ節の細胞診(リンパ節に針を刺して、その成分を吸引し、顕微鏡で観察する検査)ではリンパ腫の確定診断ができる場合とできない場合がある。できない場合はリンパ節の病理組織学的検査(リンパ節を切除し、検査センターで詳しく調べる)、または遺伝子検査(PCR)が必要である。
・病理組織検査ではグレード(腫瘍の悪性度)を決定することができ、低グレードを他と区別することは臨床的な意義がある(詳細は後述)。
・腫瘍細胞のタイプ(T細胞性またはB細胞性)を調べることは予後(今後の見通し)を評価するうえで重要
・腫瘍の進行・治療に対する反応を評価するためにリンパ節のサイズを定期的にチェックする必要がある。
・体内のリンパ節、臓器への腫瘍細胞浸潤の評価にはレントゲン検査やエコー検査が必要。
・腫瘍の進行状況、抗がん剤の副作用(白血球数の減少など)などを評価するために血液検査が必要。

<予後因子(今後の見通しを決定する要因)>
・腫瘍細胞のタイプ(表現型)がT細胞性(約20%)であるかB細胞性(約80%)であるかは最も重要な予後因子であり、B細胞型はT細胞型と比べて寛解率・期間、生存期間が優れている。
*寛解とは:抗がん剤によって腫瘍が小さくなることであり、完全寛解(CR)とは腫瘍が肉眼的に完全に消えること、部分寛解(PR)とは腫瘍の50%以上が消えることである。完全寛解の状態は肉眼的な腫瘍の消失であり、顕微鏡レベルでは腫瘍細胞が残っている。そのため、腫瘍の再燃が予想される。完全寛解=完治ではない。

・サブステージa(症状がない場合)はb(症状がある場合)と比べて、寛解期間、生存期間ともに長い。
・発熱、呼吸困難、食欲不振の症状は予後不良因子である。
・臨床ステージが進んでいる=予後が悪い ではない。
・貧血がある場合はない場合よりも寛解期間が短い。
・治療に対する反応:部分寛解の場合は、完全寛解の場合よりも生存期間が短い
・組織学的グレード:病理組織検査などにより、腫瘍の悪性度が高、中、低グレードに分類される。低グレードは明らかに高・中グレードとは異なる挙動をとる。
*低グレードリンパ腫:犬のリンパ腫の5-10%を占める。治療に対する反応率は低いが、臨床経過の進行は遅く、生存期間は長い。
・ある遺伝子(MDR1)によって、抗がん剤が効きにくくなることがあり、寛解期間・生存期間を短縮する。
・抗がん剤治療前のステロイド投与は不完全な寛解が誘導され、進行した病態が隠される。また、寛解期間・生存期間を短縮させる可能性がある。
・化学療法開始前の低アルブミン血症は予後不良因子である。

<治療(一時治療)>
治療を実施するかどうか、どの治療法を実施するかは予後、副作用、費用、犬の性格、飼い主の時間的余裕などから検討する。治療の目的は完治ではなく寛解(前述)である。治療の目標は健康に、快適に1年以上生存することである。

治療の実際:ガーデン動物病院では以下の治療法が可能である。
① 最も治療効果が高い方法:コストは最も高く、副作用も多い。1週間に1から2回、25週間の通院が必要。
Wisconsin(25週)プロトコール:CR(完全寛解率)70%  反応持続期間(腫瘍が消失してから再燃するまでの期間平均270日
② ①よりも効果は落ちるが、低コストの方法:最初の4週間は毎週、その後は3週間に1回の通院が必要。
COPプロトコール:CR70% 反応持続期間 平均130日
③ ②と同等の効果・コストで、通院回数が少ない方法:副作用はやや多い。3週間に1回の通院が必要。
ドキソルビシン単独療法:CR70% 反応持続期間 平均165日
④ 最も低コストであるが、治療効果も低い方法:副作用はほとんどない。通院は1から2週間に1回必要。
プレドニゾロン単独療法:CR46% 反応持続期間平均53日

支持療法 食餌療法
症状が重い場合は入院が必要であり、点滴、抗生物質の投与、胃腸薬の投与を、患者が自力で食べられるまで継続する。
プロトコールの最初の3週間は嘔吐止めの投与が必要。
抗がん剤の副作用で白血球数が低い場合は抗生物質の投与が必要。

<レスキュー療法>
一時治療で寛解が得られ、その後再燃した場合は、再度一時治療と同じ薬剤で治療を行う。反応が悪い場合はレスキュー療法を実施する。レスキュー療法の反応率、反応期間は一時治療よりも悪い。

レスキュー療法のプロトコール
ミトキサントロン単独療法:CR47% 反応期間2.8ヶ月
ロムスチン単独療法:CR25% 反応期間3ヶ月 骨髄抑制、肝・腎毒性有り
ダカルバジン・ドキソルビシン併用プロトコール:CR33~66%

消化器科

門脈体循環シャント

門脈とは腸と肝臓の間にある血管で、腸で吸収した食物中の栄養素や有害物質などを肝臓に送る通路のようなものです。肝臓は門脈を経由して届いた食物中の栄養素を体が利用できる状態に合成し、有害物質を解毒します。門脈シャントとは門脈が枝分かれし肝臓以外の血管につながっている先天的な異常です。食物中に含まれる有害物質が肝臓で解毒される前に全身に流れ、体調不良を引き起こします。同時に、栄養素も体が利用できる状態になる前に全身に流れるため、栄養失調状態となります。
門脈シャントには大きく2つのタイプが存在します。
①門脈体循環シャント:門脈から肉眼で確認できるぐらいの太い血管が枝分かれしています。枝分かれ血管は肝臓内にある場合と肝臓外にある場合があります。
②微小血管異形成:肝臓内で肉眼では確認できない細かい枝分かれ血管が無数にできています。

<原因>
先天性疾患であり、遺伝が原因と考えられています。ヨークシャーテリア、ミニチュアシュナウザー、シーズーなどの犬種で遺伝性があることがわかっています。

<症状>
①門脈体循環シャントでは多くの場合、1歳までに主に食後に異常な行動や運動、よだれ、嘔吐、発作、性格の変化などの症状が見られます。
②微小血管異形成ではほとんどの場合、無症状であり、健康診断などで行った血液検査で発見されます。

<治療>
①門脈体循環シャントの場合は枝分かれした血管を塞ぐ手術を行います。枝分かれが肝臓内にある場合は手術が困難です。また、血管を塞ぐことで、急な血圧の変動が起こり問題となることがあります。手術を行わない場合は療法食と内服薬で症状を緩和します。
②微小血管異形成の場合は、多くの場合、手術を行わずに、無治療または内服薬で管理できます。

<予後(今後の見通し)>
①門脈体循環シャントは手術前の症状の強さと手術までの期間、枝分かれ血管の場所などによって予後が異なります。若くて、症状が軽い状態で手術を行った場合は予後が良好です。症状が強い場合や手術時期が遅い場合の予後は要注意です。枝分かれ血管が肝臓内にある場合など、手術ができない場合の予後も要注意です。
②門脈微小血管異形成の予後は良好です。

循環器科

僧帽弁閉鎖不全(MR)

心臓には4つの部屋で構成され、部屋と部屋の間には弁があり、血液を一方通行で循環させるために、弁は心拍のリズムに合わせて開いたり、閉じたりを繰り返します。何らかの原因で弁の閉じが悪くなる状態を弁膜症と言い、左心房と左心室の間の弁(僧帽弁)の閉じが悪い状態を僧帽弁閉鎖不全と言います。僧帽弁閉鎖不全は犬で最も発生しやすい心臓の病気であり、小型の高齢犬に多発します。

<原因>
何らかの原因(原因ははっきり分かっていないが、遺伝が関係していると考えられています)で加齢とともに僧帽弁が厚くなり、弁の閉じが悪くなります。そのため、心臓から全身に送り出すべき血液が逆流し、心臓の中に停滞し、循環が悪くなります。さらに進行すると、血液中の水分が肺にしみ出します(肺水腫)。

<症状>
初期:血液の逆流が軽度に現れ、聴診器で雑音が聞こえますが、症状は認められません。

中期:循環が悪くなることで、全身への酸素や栄養素の運搬がうまく行われず、疲れやすく運動を嫌うようになります(運動不耐性)。軽度の肺水腫によって、運動・興奮時などに咳をするようになります。

末期:さらに循環が悪くなり、ほとんど動こうとしなくなり、筋肉が細くなり体重が減少します。食欲も徐々に減少します。安静時にも咳をし、呼吸が苦しくなることもあります。不整脈による発作や失神を起こすこともあります。

<治療・予後(今後の見通し)>
初期:血管拡張薬(ACE阻害剤)の投与で循環を改善します。塩分を控えること、運動を制限すること、太らせないことなども重要です。これらを実施すれば進行を遅らせることができます。きちんと管理すれば5年以上の生存が期待できます。

中期:血管拡張薬2種類(ACE阻害剤、硝酸イソソルビド)の投与、強心・血管拡張薬(ピモベンダン)、状態によっては利尿剤、強心剤の投与も必要になります。心不全用の療法食に切り替え、運動制限、肥満予防が必要です。

末期:血管拡張薬2種類(ACE阻害剤、硝酸イソソルビド)、利尿剤、強心剤の投与が必要です。呼吸困難や食欲がまったくない状況では入院が必要です。薬の副作用と症状のコントロールのバランスが非常に難しく、管理を誤ると急激に状態が悪化し、命を落とすこともあります。

フィラリア症

 フィラリア症(犬糸条虫症)は蚊によって媒介される病気です。フィラリアに感染した犬は、体内で成長したフィラリアによって心臓や肺などに障害を受けます。毎月予防薬を飲ませて感染を防ぐことが重要です。

<原因・感染サイクル>
① フィラリアの幼虫をもっている蚊が、犬の血を吸ったときに幼虫は犬の体内に入り、脱皮を繰り返し、数ヶ月で成虫になります。
② 成虫は血管に入り、心臓や肺動脈などに寄生します。
③ 成虫はミクロフィラリア(フィラリアの子供)を生みます。
④ 犬が蚊に刺されたとき、ミクロフィラリアは血液と一緒に蚊の中に入り、蚊の体内で幼虫に成長します。 → ①へ
*フィアリアは犬から犬には感染しません。蚊が媒介しなければ感染が成立しません。

<症状>
ごく少数の寄生では無症状であり、検査をするまで感染に気がつきません。
・慢性フィラリア症
フィラリアの成虫が心臓や肺の血管に寄生することで発症します。心不全、肺血栓塞栓症、気管支肺炎などが起こり、疲れやすくなる、すぐに息が上がる、呼吸が苦しい、元気や食欲が落ちる、咳をするなどの症状が見られます。重症では腹水や胸水が貯留することや、フィラリアが血液を破壊し、貧血や赤色尿が見られることもあります。

・急性フィラリア症(大静脈症候群:ベナキャバ症候群)
急激に大量の成虫が心臓内に寄生し、大静脈という血管に詰まることで、全身の血流が急激に悪化します。犬はショック状態(血液循環が障害され、全身が酸素不足に陥った状態)となり、全身の臓器が障害を受け、非常に危険な状態に陥ります。大量寄生した成虫が血液を破壊することで犬は貧血や黄疸になり、赤色尿を排泄します。

<治療・予後(今後の見通し)>
慢性フィラリア症:心不全、肺血栓症、気管支肺炎の治療を行います(内科療法)。状態が悪い場合は、入院治療が必要になることもあります。フィラリアの成虫を殺す薬を投与することも可能ですが、死んだフィラリアが血管に詰まることで、深刻な副作用が現れることがあります。また、これ以上の感染を防ぐために、以後の予防は徹底します。予後は重症度によって異なりますが、軽症の場合は良好であり、重症の場合は注意が必要です。

急性フィラリア症:緊急の外科手術で心臓からフィラリアの成虫を摘出することが必要です。手術の成功率は50%以下と非常に死亡率が高い危険な手術です。手術以外の治療法はありません。術後は慢性フィラリア症と同様の内科療法が必要です。術後も重度の慢性フィラリア症と同様、予後には注意が必要です。

<フィラリアの検査>
毎年予防薬を投与する前にフィラリア症に感染していないかどうかを検査します。フィラリアに感染している犬に予防薬を飲ませると、感染しているフィラリア幼虫が大量に駆除され、幼虫の死骸が細い血管に詰まるなどして、重大な副作用が出ることがあります。
飲ませたはずの経口薬を知らない間に吐き出したり、飲ませたと思っていても飲ませ忘れていたり、飲ませる時期や用量が不適切であったり、スポットタイプなら雨やシャンプーで流れてしまったり、薬が毛について皮膚に浸透していなかったりと、飼い主様が予防できていると思っていても実は予防できていないことはよくあります。

*検査は主に2種類の方法で行います
① 血液を顕微鏡で観察しミクロフィラリアがいるかどうか確認する方法
② 検査キットを用いて成虫の寄生を確認する方法(フィラリア成虫の抗原検査:これも血液を調べます)。
注意)ミクロフィラリアは夜に活動的になるので、日中の検査では感染していても、検出できないことが良くあります。よって、①の顕微鏡検査だけでは十分な検査ができたとはいえず、検査キットを用いた抗原検査の結果のほうが信頼できます。ガーデン動物病院では抗原検査を行っています。

<予防時期>
予防薬は飲み薬が主流であり、蚊が出だして1ヵ月後から蚊がいなくなって1ヵ月後まで毎月一回投与する必要があります(蚊から感染した幼虫が犬の体内で成長し、約1ヶ月経過した状態で予防薬によって駆虫されます。蚊からの感染を未然に防ぐのではなく、感染し成長過程のフィラリアを薬で駆除することで、フィラリア症を防ぎます。)。
大阪では、5月から12月までの8ヶ月間投与する必要があります。

<予防薬>
予防薬は①錠剤タイプ、②おやつルタイプ、③スポットタイプから選択可能です。
① ② 内服薬である錠剤とおやつタイプはフィラリア予防とお腹の虫(回虫など)の駆除が可能です。
③ スポットタイプはフィラリア予防と軽いノミ予防などの効果があります。
注意)フィラリア検査が陽性の場合は、予防薬を投与する1時間前に副作用を抑えるための薬を投与しなければなりません。予防薬の投与後10日間は犬の健康状態をこまめにチェックします。元気・食欲がなくなる、呼吸が苦しそう、咳をする、赤色尿などの症状が見られたらすぐにご連絡ください。

呼吸器科

肺水腫(ハイスイシュ)

肺水腫とは肺に大量の液体がたまり、肺でのガス交換が妨げられている状態をいいます。ほとんどの場合、単独では起こらず、何らか病気に合併して発生します。

<原因>
原因は大きく分けて心臓性(心臓に原因があるもの)と非心臓性(その他の原因のもの)に分けられます。犬と猫の肺水腫はそのほとんどが心臓性です。
・心臓性:肺静脈(肺から心臓へもどる血管)の血圧が上昇する事で、血管から気道や肺の間質へ水分が流れ出し液体が貯留し発生します。
・非心臓性:肺に炎症が起こる事で肺の毛細血管の透過性が高くなり、血管内から気道や肺の間質へ水分が漏れ出して液体がたまることで発生します。

<症状>
呼吸困難、開口呼吸(口を開けたまま呼吸を行う)ゼーゼーという呼吸音、落ち着かずに不安そうな様子などが認められます。舌の色が悪くなり(チアノーゼ)、横になって眠れず座ったままの姿勢をとる事が多くなります。水の様な泡状の鼻水が出たり、進行すると血液が混じった液体を吐く事もあります。

<治療・予後(今後の見通し)>
・肺にたまった水を除去する為に利尿剤(尿の量を増やす薬)を使用します。
・呼吸困難が重度の場合が多い為、入院治療により酸素の吸入が必要となる場合があります。
・同時に肺水腫を起こしている原因の治療を行います。
・速やかに治療が実施でき、急性期を乗り越えた場合の経過は比較的良好です。
・症状が急速に悪化する場合があり、命を落とすこともあります。

肺炎

さまざまな原因によって肺に炎症が起こり、咳や呼吸困難、元気や食欲の低下などの症状が起こります。早期に適切な治療を行うことが必要です。

<原因>
・多くは気道から侵入した細菌の感染によって起こります。ウイルスや真菌、寄生虫感染が原因の場合や、誤嚥(ゴエン:嘔吐などによって、食物や胃酸が気道から肺へと浸入すること)、アレルギーが原因の場合もあります。
・免疫力の不十分な子犬・猫、高齢犬・猫、免疫を抑える薬の服用中、栄養失調やストレス状態、ホルモン疾患や感染症を患っている場合に発生しやすくなります。

<症状>
咳や呼吸困難、元気や食欲の低下などの症状が起こります。

<治療>
・肺炎の原因によって治療法が異なります。
・細菌感染が原因の場合は、抗生物質で治療します。
・真菌感染が原因の場合は、抗真菌剤で治療します。
・食欲がある場合、軽症では内服薬で治療しますが、食欲がない場合、重症では入院治療(抗生物質の注射、点滴、吸入治療など)が必要になります。

<予後(今後の見通し)>
軽症の場合、多くはご自宅で内服薬によって管理し、治癒します。重症の場合は入院し、集中治療が必要になります。治療が適切でない場合や、早期に治療を行わない場合、もともとの健康状態が悪かった場合は、急激に症状が進行し、命を落とすこともあります。

短頭種気道症候群


短頭種(鼻が短く、顔が平らな犬種)であるパグ、ブルドック、フレンチブルドック、ボストンテリア、シーズー、ペキニーズなどに多い、「ガァーガァー」と大きい呼吸音や‘いびき’が特徴の症候群です。

<原因>
鼻の穴が狭い、のどの構造的な問題(軟口蓋過長:気管の入り口を覆う弁が長すぎる状態)などが原因で呼吸時に空気がスムーズに流れないことが原因です。興奮や運動、暑い環境などで症状は悪化します。

<症状>
軽度の場合は「ガァーガァー」という大きい呼吸音や‘いびき’だけであり、健康状態を害することは少ないですが、重症になると呼吸困難、チアノーゼ(酸素不足によって舌が紫色になり、ぐったりした様子)、失神などが起こり健康を大きく害することがあります。夏の暑い環境では熱中症を引き起こす大きな要因となります。

<治療>
軽症の場合は治療を必要としません。重症の場合に限り、鼻腔を広げる手術やのどの構造を改善する手術を行います。

<予後(今後の見通し)・注意>
・構造上の問題であるため、完治することはありませんが、多くの場合予後は良好です。
・重症の場合は注意が必要です。熱中症を防ぐために適切な温度管理を行い、日中の散歩を控えるなどの配慮が必要です。肥満は症状を悪化させる原因となりますので、体重管理も重要です。

横隔膜ヘルニア

横隔膜ヘルニアとは、胸部と腹部を隔てている横隔膜に穴があき、本来、腹腔内にあるべき臓器(胃や肝臓・腸など)が、胸腔内に侵入してしまう病気です。①外傷性と②非外傷性(先天性)とに区別できます。

<原因>
① 外傷性:交通事故や転落などの衝撃により、腹腔内に強い圧力が加わり、横隔膜が破裂しヘルニアを発症します。
② 非外傷性(先天性):生まれつき横隔膜の一部、もしくは全域が欠損しているために起こります。

<症状>
① 外傷性: 横隔膜の損傷の度合いにより症状は変わります。損傷が少ない時は、はっきりとした症状が出ないため、気づかないこともあります。損傷が大きく重度の時は、腹腔内臓器が胸腔内に入り込み傷を負った直後から呼吸困難やチアノーゼ(酸素不足により、舌が紫色になり、ぐったりした状態)となり重い症状が表れます。
② (非外傷性)先天性: 離乳期ごろから呼吸が速いなどの症状が表れ始め、ゆっくりと悪化していきます。呼吸困難が続き、命を失うこともあります。なかには、横隔膜ヘルニアであることに気づかず、そのまま元気に成長するケースもあります。

<治療>
外科手術によって、横隔膜の穴をふさぎます。

<予後(今後の見通し)>
外科手術後の予後は良好です。重症の場合は麻酔のリスクが高くなります。

気管虚脱

通常、気管は丸い筒状の形をしており、口から吸い込んだ空気はその中を通り肺へと運ばれます。しかし、なんらかの原因でその筒状の気管が平らたく押しつぶされてしまうと、空気の通り道が狭くなり、呼吸の障害や咳などの症状を引き起こします。このような病気を気管虚脱といいます。

<原因・発生>
・原因はよくはわかっていませんが、先天的な異常や肥満,老化が要因であると言われています。
・ヨークシャテリア、チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、トイプードルなどのトイ種に多く、中高齢期に見られます。

<症状>
・軽症のうちは運動や興奮、飲食の後に咳が起こります。咳は「グゥア~ッ・グゥア~ッ」といった、アヒルの鳴き声のような、乾いた大きい音の空咳がでます。
・症状が悪化すると、数分間咳が止まらない発作のような咳が起き、酸素不足に陥ります。それにより、チアノーゼ(酸素不足により舌が紫色になりぐったりした様子)となり、失神することもあります。

<治療>
・軽症では一般的に治療を行いません。
・症状が重くなると、炎症止め、咳止め、気管支拡張剤などの内服薬を用いて治療します。 発作性の咳には吸入治療を行います。内服薬で良化しない場合は手術を行うこともあります。

<予後(今後の見通し)>
・構造的な問題のため、完治することはありません。
・多くの場合は内服薬で症状が改善し、長期的に管理できます。
・内服薬で良くならないない場合、予後は注意が必要です。

気管・気管支炎

何らかの原因によって気管支に炎症が起こり、咳などの症状が起こります。

<原因>
・原因は多くの場合不明であり、特定できません。
・細菌・真菌・寄生虫・ウイルス感染、アレルギー、吸入刺激などが原因であることがあります。
・二次的な感染によって炎症が悪化することもあります。

<症状>
・軽症の場合は咳が唯一の症状です。時々、呼吸が速くなる、ハアハアと呼吸が乱れることもあります。
・元気や食欲が低下することは多くありません。
・重症では絶え間ない咳、発作性の強く激しい咳、呼吸困難などが起こりやすくなります。
・一般的に症状は数ヶ月から数年かけて進行し、興奮、温度変化、ストレス、刺激物などによって悪化します。

<治療>
・気管支拡張剤と炎症止めの内服薬で治療します。
・感染症の場合は抗生物質や抗真菌剤なども必要になります。
・咳が止まらない場合などは、上記に薬を蒸気に混ぜて吸入治療を行います。
・重症の場合は、症状が落ち着くまで入院が必要です。
・空気の乾燥する季節は加湿器が症状の緩和に有効です。咳がひどい場合はポットや風呂の蒸気を吸わせることも、ある程度効果があります。

<予後(今後の見通し)>
・多くは内服薬で管理できます。
・投薬の中断で再発することが多いため、投薬と休薬を繰り返す、または最小限の投薬を生涯続ける必要があります。

気胸(キキョウ)

胸腔内は陰圧になっており、その為に肺は十分に膨らむことが出来ます。なんらかの原因で胸壁(胸腔の外壁)や肺に穴が開き、胸腔内に空気が入ると肺は膨らむことが出来なくなり萎縮してしまいます。この状態を気胸と呼びます。

<原因・発生>
気胸は原因の種類によって以下の様に分類されます。
外傷性気胸:交通事故や怪我による胸壁や肺の損傷など。動物では最も多い。
自然気胸:肺に嚢胞と呼ばれる袋があった場合や肺炎、肺がんなどがある場合には、軽く咳をしたり興奮したりするだけでも発生する場合があります。動物ではまれです。
医原性:心臓や肺の手術などの際、胸腔内に針を刺す際に発生する場合があります。
また、胸腔内に漏れ出る空気の量が大量な場合には胸腔内は陽圧になり、緊張性気胸と呼ばれる状態になります。この状態は非常に重症で危険とされています。

<症状>
通常は呼吸困難症状が見られます。興奮していない状態でも呼吸が荒く、重度になると口をあけ息をする、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)などの呼吸困難症状が認められる様になります。末期になると呼吸状態がさらに悪化し、酸素不足およびショック状態を起こし死亡してしまいます。

<治療・注意点>
・呼吸器症状が見られない軽度の気胸であれば数日間の安静のみで回復する場合もあります。
・呼吸困難がある場合には入院による酸素吸入が必要です。
・状態が落ち着いた時点で胸腔に注射器の針を刺し、胸腔内の空気を全て抜去します。場合によっては全身麻酔をかけて胸腔内から外につながるチューブを装着し、そのチューブから胸腔内に貯まる空気を繰り返し抜く必要があります。
・一般的に外傷性気胸の場合は怪我が重傷で無い限り、予後は良好です。

 

軟口蓋過長症(ナンコウガイカチョウショウ)

軟口蓋とは上あごの一番奥にある柔らかい部分です。軟口蓋過長症とは、この軟口蓋が長く伸びて垂れ下がり、喉頭蓋と呼ばれる気管の入り口部分を塞いでしまう病気です。

<発生>
短頭種と呼ばれる、パグ、ブルドック、シーズーなどでの発生が圧倒的に多いですが、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、ヨークシャー・テリア、チワワなどの犬種でも発生が見られます。猫での発生は稀です。生まれつき病気が発生しており、若いうちから症状が認められている場合も多くみられます。

<症状>
初期には夜間のいびきが確認されます。その他の症状として、鼻を鳴らすような呼吸音が聞こえる、口を開けて呼吸をする様子が見られるなどがあり、特に興奮時にこれらの症状が悪化する傾向が見られます。重症化してくると呼吸困難が起こり、舌や鼻先の皮膚の色が紫色になるチアノーゼという症状が確認されます。

<治療・注意点>
・急性の呼吸困難を起こしている場合には、まず速やかに酸素吸入や体温管理を行なう必要があります。この場合は入院での治療が必要です。
・呼吸困難を抑える目的で、ステロイド剤や鎮静剤を使用する場合があります。
・内科的な治療では急性期を抑えることは出来ますが、根本的な治療にはなりません。
・病気を完全に治す為には外科手術により軟口蓋を切除する必要があります。

<予防>
・素因のある犬種では暑い時期の散歩をひかえる、室温や湿度に気をつけるなどの環境的な対策が必要となります。
・過度な体重増加も症状悪化の原因となる為、注意が必要です。

 

乳び胸(ニュウビキョウ)

乳び液は脂肪成分や電解質、ビタミンなどを含んだリンパ液で、小腸でリンパ管に吸収されます。その後、乳び液は胸管を通り全身に運ばれますが、その乳び液が胸管から胸腔内に漏れて貯まった状態を乳び胸と呼びます。

<原因・発生>
乳び胸の原因は以下の様に分類されます。
外傷性:交通事故や怪我による胸壁(胸腔の外壁)の損傷などによる胸管破裂など。
非外傷性:他の疾患が原因となり発生します。代表的な病気としては、胸腔内の腫瘍、心臓病、肺葉捻転(肺が捻れてしまう病気)などがあります。
特発性:乳び液が漏れる原因が検査を行なっても不明なもの。犬猫ではこれが最も多いとされています。

<症状>
通常は呼吸困難症状が見られます。興奮していない状態でも呼吸が荒く、重度になると口をあけ息をする、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)などの呼吸困難症状が認められる様になります。食欲不振や体重減少などの症状が認められる場合もあります。

<治療・注意点>
・呼吸困難がある場合には入院による酸素吸入が必要です。
・状態が落ち着いた時点で胸腔に注射器の針を刺し、胸腔内の乳び液を全て抜去します。貯留した乳び液を繰り返し抜くだけでも呼吸状態はかなり楽になりますが、再度貯留してきた場合には同様の処置により繰り返し抜く必要があります。
・乳び液の産生量を減少させる目的で食事中の脂肪分を減らすといった食餌療法を実施します。
・原因が外傷性の場合にはこういった治療のみで回復する場合があります。
・非外傷性や特発性の場合には、これら内科治療ではうまくいかず外科治療が必要となる場合が多いです。ただし外科治療を行なっても完治できない場合が多く、予後はいいとはいえません。

膿胸(ノウキョウ)


膿胸とは胸腔内に何らかの原因により感染が広がり、膿が貯留した状態です。犬猫で発生が見られ、胸腔の片側に膿が貯まる場合と両側に貯まる場合があります。

<原因・発生>
感染経路がはっきりと解ることはまれですが、肺炎や胸膜(肺と胸の内側を覆っている膜)の炎症、胸部の奥まで達するような怪我、異物を飲み込んでそれが食道を突き破って胸腔内に到達するなどが原因として考えられます。そういったことから、犬では狩猟犬やスポーツドッグといった草むらを走りまわる環境の子が、猫では外に出て喧嘩をする子やFIV(猫免疫不全ウイルス感染症)、FeLV(猫白血病ウイルス感染症)などに感染している子での発生が多く見られます。

<症状>
初期の症状は発熱や食欲不振が見られ元気がなくなります。さらに貯まった膿の量が増えると呼吸が速くなり、口をあけて息をする、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)などの呼吸困難症状が認められる様になります。末期になると呼吸状態がさらに悪化し、感染に体が耐えられなくなって死亡してしまいます。

<治療・注意点>
・呼吸困難がある場合には入院による酸素吸入が必要です。
・状態が落ち着いた時点で胸腔に注射器の針を刺し、貯まっている膿を出来るだけ全て抜去します。場合によっては全身麻酔をかけて胸腔内から外につながるチューブを装着し、そのチューブから胸腔内を生理食塩水で繰り返し洗浄します。
・感染を抑える目的で抗生剤を使用したり、状態の悪い子では脱水症状や栄養状態をよくする為に点滴を実施します。
・治療がすみやかに行われた場合の予後は良好です。
・FIV、FeLV感染や悪性腫瘍がある場合や他の疾患があり全身状態が良くない場合には治療の効果が悪い場合もあり、治療中に死亡することもあります。

泌尿器・生殖器科

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症とは、子宮の中に膿が貯まる病気であり、膿の中には多数の細菌が繁殖しています。女性ホルモン(プロゲステロン)の影響で、子宮内膜(内側の壁)の肥厚、子宮内への液体分泌、子宮の筋肉の活動低下などが起こり、子宮内に液体が貯まります。また、外陰部は便や地面などから細菌に汚染されやすい環境にあり、子宮内にまで細菌が侵入することがあります。これらの条件が重なると子宮内の液体に細菌が繁殖し、子宮蓄膿症が発症します。

<発生>
避妊手術を受けていない高齢のメス犬で多発する病気であり、避妊手術を受けていないメス犬では10歳までに約20%が子宮蓄膿症を発症すると言われています。

<症状>
・多くの場合は陰部から膿を排泄します。膿を排泄せずに、子宮に貯まり続ける場合もあります。食欲・元気の低下、嘔吐などの症状がよく見られます。水を飲む量、尿の量が多くなることもあります。
・脱水症状により、急性腎不全が起こることがあります。細菌感染が重度の場合や治療が遅れた場合は、細菌がつくる有害物質によって、体内に血栓がつくられ、多臓器不全、血液凝固障害など深刻な状況に陥ることがあります(播種性血管内凝固)。
・膿を排泄しないタイプがあり、その場合は子宮内が膿汁でいっぱいになり、子宮が破れ、膿汁が腹腔内に広がり(腹膜炎)、緊急処置が必要な状況になります。

<治療>
・避妊手術(子宮・卵巣摘出術)で完治します。
・脱水症状を緩和するために十分な点滴を行います。
・腎不全や播種性血管内凝固などの合併症が起こっている場合は、それに対して治療を行います。

<予後(今後の見通し)>
・早期に避妊手術を実施できた場合は予後が良好です。
・感染が重度であり、急性腎不全や播種性血管内凝固などの合併症を伴う場合は予後が要注意です。
・子宮が破れ、腹膜炎が起こっている場合は、緊急手術が必要であり、予後は要注意です。

神経科

椎間板ヘルニア

椎間板とは脊椎(頸の骨、背骨)と脊椎の間にあるクッションのような物質で、脊椎がぶつかり合うことを防いでいます。激しい運動や事故などで脊椎に強い力がかかると、椎間板が飛び出し、脊椎の中を通っている脊髄という太い神経を圧迫し、様々な症状を引き起こします。

<発生>
椎間板ヘルニアは2つのタイプに分けられます。
①ダックスフンド、シーズー、コーギー、ビーグル、トイプードル、ペキニーズなどの犬種で3~6歳ごろに急性に発生するタイプで、椎間板が急性に軟骨様変性という病的な変化をすることが原因です。
②大型犬に多く、高齢期にゆっくりと悪化していくタイプで、椎間板が加齢によって線維化(病的に硬くなる変化)することが原因です。

<症状>
・頚椎(頸の骨)のヘルニアでは頚の痛みが最も多く見られる症状であり、頚を動かすことを嫌がり、動きが鈍くなります。重度の場合は四肢の麻痺が見られ、歩行できなくなり、尿・便の排泄を自分の意思でできなくなります。
・胸腰椎(背骨)のヘルニアでは背中から腰の痛みによって、動きが鈍くなり、抱っこした時などに痛そうに鳴くことが多く見られます。重度の場合は後肢の麻痺が見られ、四肢での歩行ができなくなり、尿・便の排泄を自分の意思でできなくなります。

<治療>
・症状が痛みだけであり肢の麻痺が見られない場合と、軽度の麻痺が見られても四肢での歩行が可能な場合は、安静にすることと鎮痛・消炎剤の投与を行います。安静が最も重要で、ケージまたはサークル内で最低2週間運動を禁止する必要があります。
・中程度から重度の麻痺によって歩行が不可能な場合や、軽度の麻痺でも内科治療で症状が緩和されない場合などは外科手術が必要です。

<予後(今後の見通し)>
・症状が痛みだけの場合や、麻痺が軽度の場合は安静と内科療法によって80%以上の治療効果が期待できます。
・麻痺が重度の場合は安静と内科療法による治療効果は50%以下です。
・痛みを感じることができるが、歩行ができない中程度の麻痺の場合、手術によって80%以上の治療効果が期待できます。
・痛みを感じることができない重度の麻痺の場合は、手術を行っても回復の見込みは少なくなります。
・重症度や治療法にかかわらず、治療後に再発する危険性があります。
・重度の場合は脊髄の軟化が急速に脊髄全体に広がり、死亡する恐ろしい状態に陥ることがまれにあります(脊髄軟化症)。

内分泌(ホルモン)科

糖尿病

食後に増加した血液中の糖分を細胞が吸収するために膵臓からインスリンが分泌されます。糖尿病はインスリンの分泌が不足するために、血糖値が上昇し、尿にも糖が排泄され、様々な症状を引き起こす病気です。

<発生・原因>
・犬ではどの犬種でも、若齢から高齢まで年齢を問わず発生します。
・猫ではどの猫種でも、多くは中高齢で発生します。
・膵炎による膵臓の破壊、またはホルモンバランスの不均衡(メスでは発情後、副腎皮質ホルモンの増加・投与など)、ストレス、肥満、他の併発疾患などの影響によって発症します。

<症状>
・水をよく飲み、尿をたくさんします。糖分をエネルギーとして利用できなくなり、体脂肪や筋肉をエネルギー源として使い始めるために次第に体重が減少します。
・さらに病状が進行すると、体脂肪を分解するときに生じるケトンという有害物質が体内に蓄積し、元気・食欲の
低下、嘔吐、下痢などの症状がみられ、重度の場合はこん睡状態に陥ります(糖尿病性ケトアシドーシス)。
・感染に対しての抵抗力が低下するため、感染症を起こしやすくなります。
・犬では白内障、猫では神経の異常による歩行異常などの合併症が起こることがあります。

<治療>
・食餌療法:高タンパク、低炭水化物に調整した糖尿病用の処方食が必要になります。
・インスリン療法:不足したインスリンを注射で補う必要があります。初期治療は入院が必要であり、適切な投与量と投与間隔を決定します。退院後は自宅でのインスリン注射を行います。
・経口血糖降下薬:猫ではインスリン投与を必要とせず、内服薬で管理できる場合があります。
・糖尿病性ケトアシドーシスの治療:入院による集中治療が必要です。点滴による水分やミネラル、栄養分の補給を十分に行い、持続的なインスリン投与を行います。
・その他:メス犬は避妊手術によって糖尿病の予防やインスリン療法の補助的な効果が得られます。減量やストレスの軽減も同様な効果があります。

<予後(今後の見通し)>
・ケトアシドーシスなどの重度な合併症がある場合や、インスリン療法によって血糖値が安定しない場合の予後は要注意です。
・腎不全や心不全、他のホルモン疾患などの併発疾患がある場合は併発疾患の程度が予後に影響します。
・重度の合併症や併発疾患がない場合は適切な治療により、3年以上の生存が望めます。

甲状腺機能低下症

甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌し、主に新陳代謝を活発にする働きをにないます。甲状腺機能低下症とはホルモンの分泌が低下し、それに伴う様々な症状が見られる病気です。原因は①免疫異常による甲状腺の炎症、または②原因不明の甲状腺の萎縮の二つが考えられています。

<発生>
・中年齢(2~6歳)の犬に発生しやすいと言われています。
・ゴールデンレトリバー、ポインター、マルチーズ、ビーグル、ダルメシアン、コッカー
スパニエル、ドーベルマンなどの犬種で発生しやすいですが、他の犬種でも発生
します。

<症状>
新陳代謝が悪くなるため、無気力、活発さがなくなる、肥満、脱毛、皮膚の色素沈着(黒いシミ)、フケ、免疫力の低下による皮膚炎や膀胱炎などの症状が見られます。

<治療>
・甲状腺ホルモン剤の内服薬を投与します。
・一生涯、投薬を続ける必要があります。
・投与量が適切であることを定期的な血液検査で確認し、必要であれば投与量を
調節します。

<予後(今後の見通し)>
多くの場合は治療を始めて1~2ヶ月で症状が緩和し、健常な動物と同様の寿命を
まっとうできます。

副腎皮質機能低下症

副腎皮質から分泌するホルモンが不足することで、様々な症状を引き起こす疾患です。原因の多くは免疫の異常によって、副腎の機能が損なわれる事だといわれています。若齢から中年齢のメス犬に発生が多いといわれています。

<症状>
元気や食欲の低下、嘔吐、下痢、徐脈、低体温、震えなどの症状が見られ、体調や症状には好・不調の波があることが特徴です。診断にはホルモンを測定する血液検査が必要です。

<治療>
・不足しているホルモンを内服薬で補うことで治療します。
・重症の場合は、集中治療が必要なため入院が必要です。フードを食べられるようになると、自宅でのホルモン療法に切り替えられます。

<予後(今後の見通し)>
・適切なホルモン療法を行えれば、予後は良好です。
・重症の場合は様態が安定するまでは安心できません。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質から過剰にホルモンが分泌される病気であり、様々な症状が引き起こされます。①副腎が腫瘍化し、過剰にホルモンを分泌するタイプ(副腎腫瘍)と、②脳の下垂体から副腎に異常な指令が出された結果、副腎から過剰にホルモンが分泌するタイプ(下垂体性)に分かれます。

<発生>
6歳以上のプードル、ダックスフンド、テリア種、ジャーマンシェパード、ビーグル、ラブラドールレトリバーなどの犬に多く発生します。

<症状>
水を飲む量・尿量・食欲の増加、落ち着いている時もハアハアと呼吸をする、お腹が膨れている、被毛が薄い、四肢の筋肉が細くなるなどの症状が見られます。下垂体性の場合は下垂体が大きくなり、脳への悪影響によって異常行動を起こすこともあります。肺血栓塞栓症、感染などの合併症が起こることがあります。

<治療>
症状が軽度であり、生活の質が損なわれていない場合は、治療は行わずに定期的な血液検査で経過を観察します。
①腫瘍化した副腎は手術で摘出します。手術ができない場合は下垂体性と同様に内服薬で治療しますが、効果はあまり高くありません。
②下垂体性の場合は内服薬で治療します。副腎皮質ホルモンの働きを抑える薬を毎日投与する方法がもっとも安全であり、効果的です。薬の効果や副作用を定期的な血液検査で確認し、投与量を調節する必要があります。

<予後(今後の見通し)>
①副腎腫瘍の場合、手術時に転移があれば予後は不良ですが、転移がなければ平均3年の生存が望めます。
②下垂体性の場合、脳への悪影響がある場合は予後不良ですが、なければ内服薬による治療によって平均3年の生存が望めます。

感染症

パルボウイルス感染症


パルボウイルスは犬・猫の腸や骨髄に感染し、腸炎や白血球減少に伴う様々な症状を引き起こします。
パルボウイルス感染症はペットショップやブリーダーなどのたくさんの犬猫がいる環境で、ワクチン接種が不十分な子犬・子猫で流行します。

<発生>
感染動物の糞便や嘔吐物を介して経口的に伝染します。基本的には犬から犬、猫から猫に感染しますが、場合によっては犬と猫の間で伝染することもあると言われています。人間には感染しません。感染から発症までの潜伏期間は5~12日です。

<症状>
元気や食欲の低下、嘔吐などの症状から始まり、その2~4日後から重度の下痢や血便が続きます。骨髄に感染したウイルスは白血球を破壊し、免疫力を低下させます。重症の場合は傷ついた腸粘膜から腸内細菌が侵入し、免疫力の低下した身体に広がります。腸炎が慢性化すると栄養失調(低アルブミン血症)や貧血を起こすことがあります。

<治療>
・ウイルスに対する治療法は無く対症療法が主体となります。
・治療は入院して行います。重症度によりますが、入院期間は平均1週間、長い場合は2週間以上必要となります。
・点滴で嘔吐や下痢で失った水分を補い、脱水症状を緩和します。嘔吐が止まるまでは、絶食が必要であり、嘔吐止めの薬を投与します。
・貧血の場合は輸血を、低アルブミン血症の場合は輸血や栄養点滴を行います。
・重症で慢性化した食欲の回復しない動物には、食道や胃腸にチューブを付け、栄養補給が必要になります。
・細菌の2次感染を抑える為に抗生物質の投与を行います。
・抗ウイルス薬やインターフェロンが有効な場合もありますが、基本的には感染した動物自身の免疫力でウイルスを排除し回復します。それまでの間、点滴や栄養補給を行い、体力の維持・免疫力の強化を補助することが治療の目的です。

<予後(今後の見通し)>
・軽症の場合や、早期に治療を始められた場合は治療開始から5日以内に回復します。
・重症の場合や、治療の開始が遅れた場合、5日以内に症状の改善が認められなければ、予後が要注意となります(死亡率は50%以上です)。

<予防・注意点>
・適切なプログラムで行ったワクチン接種で予防できます。
・感染症から回復後2~4週間は便にウイルスが排泄されます。その間は外出を避け、排泄場所やお尻周りなどの消毒が必要です。
・パルボウイルスは乾燥や温度変化に強く、感染動物から排泄されてからも、自然環境で数ヶ月生存します。消毒は徹底的に行ってください。

 

犬ジステンパー感染症


犬ジステンパーウイルスによって引き起こされる犬の病気です。特に1歳未満の子犬(生後3~6ヶ月齢の犬)がかかりやすく、感染すると高熱や神経症状が引き起こされ、死亡することも多い病気です。犬以外にもキツネ、フェレット、アライグマなど多くの哺乳類が感染します。
<発生>
原因ウイルスはパラミクソウイルス科モルビリウイルス属の犬ジステンパーウイルスです。感染した犬の唾液や尿などの分泌物、およびその飛沫物を直接吸い込んだり、接触したりすることが主な感染経路と考えられています。このウイルスは感染動物の体外に出ると数時間しか生きられない為、動物が密集している所(ペットショップなど)での発生が多いとされています。

<症状>
ウイルス感染が起こってから症状が出るまで1~4週間かかります。発熱が2度起こるとされており、1度目の発熱(通常感染から1週間後頃)はほとんど気づかれません。その後、2回目の発熱の際には、くしゃみや目ヤニ、食欲不振などが認められます。ここで十分に免疫力の高い子であれば、そのまま回復します。免疫力の低い子では、咳などの呼吸器症状や血の混じった下痢などの消化器症状が認められるようになります。病気がさらに進行するとウイルスが脳に侵入してウイルス性脳炎を起こし、けいれん発作や後足がうまく動かせないなどの神経症状が認められるようになります。また、ウイルスの脳への感染が続くと脊髄神経を侵し、脊髄炎を引き起こします。こういった脳脊髄炎の症状は、他の症状と同時に起こるとは限らず、全身のその他の症状が回復してから数ヵ月後に発生する場合もあります。その他に肉球や鼻先の皮膚が硬くなる症状が見られます(ハードパッドと呼ばれます)。

<治療・予後(今後の見通し)>
・ジステンパーウイルスに対する有効な治療法はありません。
・二次的な細菌感染(特に肺炎)に対して抗生物質による治療を行います。
・消化器症状や神経症状が見られている場合には、それに対する治療を実施します。
・その他、栄養や脱水を補う為に輸液治療を実施します。
・基本的に予後はあまり良く無いですが、若い子、特に神経症状が認められている場合には死亡率が高く、たとえ回復したとしても後遺症が残る場合があります。

<予防・注意点>
・適切なプログラムで行ったワクチン接種で予防できます。
・感染している動物は他の動物(特にワクチンが完了していない子犬)に感染を広げない為に隔離する必要があります。

 

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

「ケンネルコフ」とは?
ケンネルコフとは他の犬からウイルスなどが伝染して起こる人間の風邪に似た病気です。

いつ、どのように感染する?
たいていは生後数週齢の仔犬(1年目のワクチンを打ち終える前)が、たくさん犬がいる環境(ペットショップ、ブリーダー、動物保護施設など)で他の感染犬から伝染します。
ケンネルコフに感染した犬が咳をすると空気中に病原体がまき散らされ、それを吸い込むことで感染します。
感染した直後は症状が出ていなくても、環境の変化、輸送などによるストレス、栄養不足などによる抵抗力の低下などが引き金となって症状が出始めることが多いです。ペットショップで購入したワンちゃんがお家に来て2,3日後に咳をし始めるというようなことが多いです。

どういう症状?
症状は咳です。特に運動後、興奮しているとき、リードを引っ張って首を圧迫したとき、食事中、水を飲んだ後などによく咳をします。鼻炎の症状(くしゃみ、鼻汁)などの症状がみられることもあります。

どうすれば治る?
・通常は治療をしなくても、適度な室温(できれば過湿)、安静、適切な栄養管理を守れば2週間以内に症状は軽くなります。その後、軽い咳は続きますが、成長し体が出来上がり、抵抗力が備わってくるとともに自然治癒します(6~10ヶ月齢ごろには治癒しています)。
・症状が重い場合や症状の悪化が予想される場合は抗生物質、気管支拡張剤、炎症止めなどの内服薬を処方します。
・ただし、2週間以内に症状が軽くならず、むしろ悪化した場合は要注意です。ケンネルコフに良く似た怖い伝染病「ジステンパー」であった可能性、またはケンネルコフが悪化して「肺炎」を起こしている可能性があります。

* 2週間以内に元気や食欲が落ちてきた場合や咳が明らかに悪化した場合はすぐにガーデン動物病院までご連絡ください。レントゲンや血液検査が必要です。咳がひどいときは吸入による治療も可能です。

* ご自宅では2週間、適度な室温管理(できれば過湿も)、安静(ストレスを与えない)、適切な栄養管理が必要です。外出、他の犬との接触は避けてください。

 

レプトスピラ症

レプトスピラ属に属する数種類の細菌のいずれかが感染することで発症します。
雨季に発生が多く見られる人獣共通感染症(動物だけでなく人にも感染する病気)で、特に農業、畜産業従事者での発生が多いとされています。

<発生>
この菌は湿った環境であれば数ヶ月生存できる為、伝播経路しては水系感染が主体と考えられています。特に補菌動物となっているネズミの尿が環境(河川、用水、湖沼、田園など)汚染し、それに接触した人、牛、ペット(特に犬)が感染します。感染は経皮、経粘膜感染によって起こるため、皮膚の傷、口腔粘膜、喧嘩などでも感染します。すべての年齢の犬猫で感染が認められます。感染から発症までの潜伏期間は5~14日間です。

<症状>
症状は不顕性型、出血型、黄疸型に分類されます。
・不顕性型:特に症状が無いまま自然治癒する型です。回復した犬ではしばらくのあいだ尿中に病原菌が排出され続ける為、他の動物の感染源となるという問題があります。猫が感染した場合にはほとんどがこの型になります。
・出血型:1~2日間発熱したのち熱は下がりますが、その後状態が一気に悪化します。食欲不振や結膜の充血、口や眼の粘膜の出血、嘔吐、下痢などの症状が認められます。ショック状態となり死亡する場合もあります。
・黄疸型:初めから黄疸と出血症状が認められ、血色素尿という赤い色の尿が認められます。症状が突然に発生し、急激に状態が悪化します。

<治療・予後(今後の見通し)>
・抗生物質による治療が主体となります。
・腎臓や肝臓が重度に障害されている場合が多い為、同時にそれを保護する治療を実施します。
・ショック状態になっている動物ではその治療を実施します。
・出血型や黄疸型では、治療を実施して急性期を乗り越えたとしても死亡率が高く予後はよくありません。

<予防・注意点>
・適切なプログラムで行ったワクチン接種で予防できます。
・レプトスピラ属はどの型であっても人に感染すると考えられます。感染した動物の尿や汚染された水、その動物の体には直接触れないようにして下さい。触る場合には、必ず手袋を着用するようにして下さい。汚染されたタオルなどは洗剤を使用して洗浄した後、十分に消毒を実施する必要があります。

口腔疾患

歯周病

歯周病は、犬猫の口腔内の疾患の中で最も発生頻度が高い病気です。2歳以上では8割以上の子で発生していると言われています。

<発生>
口腔内の歯垢の中に潜む細菌が原因となり歯周組織が炎症を起こします。
歯石は歯垢が石灰化したものです。歯石の表面には歯垢が付着しやすい為、いったん歯石が付着すると歯垢や歯石付着を助長することとなり、更なる歯周病悪化の原因となります。

<症状>
歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられます。
歯肉炎:歯周病のごく初期に見られる歯肉(歯ぐき)の炎症です。この時期で治療を実施すれば回復することが可能とされています。
歯周炎:歯肉炎が進行していくと、病変は歯肉だけにとどまらず炎症がさらに深い歯周組織に広がっていきます。歯槽骨(歯を支えている骨)まで吸収が始まると、歯周ポケットと呼ばれる深い溝か形成されるようになります。このポケットの奥で歯周病の原因細菌がたまりさらに病状を悪化させていくようになります。歯槽骨が重度に傷害されると歯を正常な状態で支えることが困難となり、歯は動揺し、最終的には抜け落ちてしまいます。この状態まで進行すると、治療により進行を緩やかにすることは可能ですが、吸収された歯槽骨を回復させることは不可能です。

<治療>
・軽度の歯肉炎に対しては、ブラッシングなどにより付着した歯垢を除去することで口腔内を清潔に保つことで回復が見込めます。
・進行した歯肉炎や歯周炎の場合には、付着した歯垢や歯石を除去する必要があります。特に細菌の温床となっている歯周ポケット中の清掃が重要になるため、基本的には全身麻酔による治療が必要となります。より進行し歯のぐらつきが酷い場合には、抜歯を行う必要があります。

<予後(今後の見通し)・注意>
・歯垢を付着させないことが歯周病最大の予防になる為、治療を実施した後にも、歯ブラシを主体としたホームデンタルケアを行うことが重要となります。

 

根尖周囲膿瘍(コンセンシュウイノウヨウ)

根尖周囲膿瘍は歯根(歯の根っこ)の先端部分(根尖部と呼ばれます)の周囲に膿が溜まる事をいいます。

<発生>
歯周炎が酷くなったり、何らかの原因で歯の破折が起こり歯髄(歯の内部の神経と血管が通っている所)が露出した場合に、
歯髄に感染が生じると歯髄炎が発生します。歯髄炎が進行すると歯髄が壊死し、根尖周囲膿瘍が発生します。

<症状>
眼の下の部分が突然腫れる症状が最も多く認められます。重症になるとその部分の皮膚が破れて穴が開き中の膿が拭き出します。
また、痛みから口の周りを触られるのを嫌がったり、食欲が低下したりする場合もあります。

<治療>
・抗生剤や消炎剤の使用により一時的な症状の改善は認められますが、最終的には抜歯が必要となる場合が多いです。
・歯周炎が軽度であれば、原因となっている歯の壊死した歯髄を取り除き、薬剤を充填する事(根管治療と呼ばれます)で病変が治癒する場合もありますが、
歯周炎が重度で合った場合には再発も多く、こちらも最終的には抜歯が必要となります。

<予後(今後の見通し)・注意>
・歯石除去やブラッシングを実施し歯周病を悪化させない事が必要です。
・硬いおもちゃやおやつを与える事をひかえたり、硬いものをかじる習慣を無くし歯と歯周組織の健康を保つことが予防に繋がります。

 

唾液腺嚢胞(ダエキセンノウホウ)

犬、猫では4対の唾液腺(口の中に唾液を分泌する腺)があり、それぞれ耳下腺、下顎腺、舌下腺、頬骨腺と呼ばれます。唾液腺嚢胞は唾液腺粘液嚢胞(ネンエキノウホウ)、唾液腺やその管が損傷し周囲の組織内へ唾液が漏れて溜まることで発生します。

<発生・症状>
病気が起こった腺の場所によって4つに分けられ、それぞれで症状が異なります。

・頚部粘液嚢胞:顎の下から首にかけての範囲で柔らかく、特に痛みの無い腫れが認められるようになります。
・咽頭部(イントウブ)粘液嚢胞:のどの奥の組織内に唾液が溜まるため、呼吸困難やいびきの発生、食餌を飲み込みにくくなるといった症状が発生します。
・舌下部粘液嚢胞(ガマ腫とも呼ばれます):舌の下の組織内に唾液が貯留する為、舌の動きがおかしくなったり、食欲不振、食餌を飲み込みにくくなる、薄い血液の混じった唾液が出るなどの症状が見られます。
・頬骨粘液嚢胞:眼球の下の組織に唾液がたまり、眼が外側に出てくる、眼の向きがおかしくなる、眼の下に特に痛みの無い腫れが認められるなどの症状が現れます。
これらの型2つ以上が同時に複合して発生する場合も見られます。

<治療・注意点>
・症状が腫れだけである場合には、嚢胞内の唾液を針のついた注射器で抜くことで様子を見る場合もあります。ただし、針を刺した部位からの感染が発生するデメリットがある為、繰り返し抜く必要があるような場合には外科治療を選択します。
・外科手術としては基本的に嚢胞の切除または摘出を行います。
・それだけでは再発が見られる場合もあり、その場合は腺自体の摘出が必要となります。
・どの場合でも感染を防ぐ目的で抗生剤を使用します。

 

咀嚼筋炎(ソシャクキンエン)

咀嚼筋炎は顎を動かす咀嚼筋(顎二腹筋、側頭筋、咬筋)が侵され、炎症を起こす病気です。主に犬で認められます。

<原因・発生>
原因としては自己免疫性(自分自身の免疫異常により発生する病気)と考えられています。
年齢や雄雌にかかわらず発生しますが、大型犬(特にジャーマンシェパードやドーベルマン、レトリバー種など)に多く認められます。猫で認められた報告はありません。

<症状>
初期の症状としては咀嚼筋が腫脹し痛みが認められます。痛みのために口を開けるのを嫌がったり、食餌を食べるスピードが低下したりします。よだれが認められる場合もあります。
慢性化すると咀嚼筋は萎縮し、両側の頭の筋肉がへこんだように見えたり、眼の奥の筋肉が萎縮することで眼が置くに落ち込んだような状態になります。痛みが重度になると口が開けられなくなり食餌が食べられなくなる場合もあります。

<治療>
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンやシクロスポリンという薬剤が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し経過を観察します。薬剤の投与が長期間になる場合もあり、その場合には定期的な血液検査をしながらこれら薬剤の副作用に注意をはらう必要があります。
食餌を食べることが困難な場合には流動食を与えたり、場合によっては腹部の皮膚から胃にチューブ(胃ろうチューブ)を設置しそこから食餌を与える場合もあります。

<予後(今後の見通し)>
初期に治療が実施されれば回復が望めますが、慢性化していた場合の予後はあまりよくありません。また治療がうまくいったとしても咀嚼筋の萎縮が残ったり再発する場合もある為、その後の経過には注意を払う必要があります。

整形外科(骨・関節・筋肉疾患)

骨折の治療

<治療法の選択>
治療の前にレントゲン検査を行い、骨の折れ方を調べます。骨折部位、折れ方、動物の年齢、性格などから治療法を選択します。

<ギブス固定>
骨折部位と折れ方によっては、手術を行わずに骨折を整復しギブスを巻くだけで治癒する場合があります。ギブスは数週間巻いておき、その間は安静にする必要があります。1~2週間に1回の通院で経過を見ます。レントゲン検査で骨の癒合を確認し(ギブス固定後2~3ヶ月で癒合します)、ギブスをはずします。ギブスをはずした後は約2週間の安静が必要です。
歩行時に体重のかかりにくい部位、骨のずれが小さい折れ方、若齢、おとなしい性格などの場合は手術を必要とせず、ギブス固定法の適応となります。

<手術>
ギブス固定が適応できない場合は手術が必要です。骨折を整復し、金属プレート、ネジ、ワイヤー、ピンなどを用いて骨がずれないように固定します。必要ならば術後にギブスも併用します。
術後は4日から1週間の入院が必要です。退院後は安静を保ち、1~2週間に1回の通院で経過を診ます。骨が癒合すると(術後2から3ヶ月で癒合します)、必要に応じて再手術を行い、金属を取り出します。金属を取り除いた後は約2週間の安静が必要です。

<注意点>
* 術後、金属の影響で骨が溶解し、細くなることがあります。そのような場合は、再手術によって金属を取り出し、ギブス固定を行います。
* ギブス固定中は、ギブスの両端が皮膚にあたることで皮膚炎を起こすことがあります。その場合はギブスの端を切り、抗生物質などで皮膚炎の治療を行います。

 

股関節形成不全

「股関節形成不全」は大型犬や超大型犬によくみられる遺伝性の疾患です。股関節の問題によって、歩き方や座り方に異常が見られます。

<発生>
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドックなどの大型犬や超大型犬に多く発生します。生後半年~1年ごろに症状が現れることが多いと言われていますが、成犬や高齢犬でも発生します。明らかな原因はわかっていませんが、遺伝性が関係していることは明らかです。発育期の栄養バランスの不均衡、特にタンパク質やカルシウムの過剰摂取によって発症しやすくなると言われています。これらの原因によって、骨盤や大腿骨の発育不全、変形が生じ、股関節が緩くなることで様々な症状を引き起こします。

<症状>
もっとも多く見られる症状は、後ろ足の跛行(肢を気にする、かばう歩き方)、立ち上がる事や運動を嫌がる、腰を横に振って歩くなどです。進行すると股関節の痛みが増し、患肢を挙げて歩くことや、支えなければ歩けなくなることもあります。

<治療・注意>
健常に一番近い状態に戻すためには手術が必要です。小型犬から中型犬では大腿骨頭(太ももの骨の先端部のことで、骨盤とつながる部分)を切断する手術によって、運動時の股関節の痛みを無くし、健常に近い状態に戻すことができます(ガーデン動物病院で実施できます)。大型犬では人工関節を形成する方法が最も有効ですが、特別な医療機器と専門的な技術が必要であり、実施できる施設が限定されます(専門病院をご紹介します)。動物の年齢や関節の状態によっては、他の手術法を選択することも可能です。
手術以外には、鎮痛剤や関節炎用のサプリメントで痛みを緩和する方法もあります。(これらは治すのではなく、痛みを抑えることが目的であり、根本的な治療ではありません)。標準体重を超えている場合は減量することで症状がある程度緩和できますバランスの取れた食事を与え(カルシウムの添加は栄養バランスを崩し、関節に悪影響を及ぼします)、過度な運動は控えることも重要です。
遺伝性の疾患のため、股関節形成不全の犬は繁殖に用いるべきではありません。新しく子犬を飼い始める時は、数代の先祖について調べる必要があります。

 

レッグペルテス:大腿骨頭の虚血性壊死(ダイタイコットウノキョケツセイエシ)

「大腿骨頭の虚血性壊死」は、レッグペルテス症、若年性変形性骨軟骨炎などとも呼ばれ、1歳以下の小型犬に多く認められる病気です。

<発生>
原因は分かっていませんが、大腿骨頭への血管が損傷を受け、血液供給が不足または停止する事で骨頭が壊死を起こします。
一般的に若齢の小型犬に多く、オスメスどちらにも認められます。大型犬や猫でもまれに発生する場合があります。

<症状>
発症した足では痛みや跛行が確認されます。進行するとほとんど足を着けない状態になります。また足や臀部の筋肉の萎縮が認められる場合もあります。症状は通常片側の足に現れますが、両方の足に発症することもあります。

<治療・注意>
・外科的な治療が第1選択となります。
・外科治療では通常、壊死した骨頭の切除を行います。そうすることで偽関節形成され、正常な歩行が可能となります。手術後約1ヶ月間はリハビリが必要です。
・大型犬では人工関節を設置する方法を選択する場合もあります。(専門病院をご紹介します。)
・内科的な治療として運動制限や鎮痛薬の投与を実施し、跛行などの症状が一時的に落ち着く場合もありますが、病気が進行してくると最終的には外科治療が必要となる場合がほとんどです。

 

前十字靭帯断裂(ゼンジュウジジンタイダンレツ)

「前十字靭帯断裂」は、大腿骨(太ももの骨)と頸骨(すねの骨)を結んでいる膝の靭帯(前十字靭帯)がなんらかの原因により損傷を受け、部分的または完全に断裂することをいいます。

<発生>
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドックなどの大型犬や超大型犬に多く発生します。生後半年~1年ごろに症状が現れることが多いと言われていますが、成犬や高齢犬でも発生します。明らかな原因はわかっていませんが、遺伝性が関係していることは明らかです。発育期の栄養バランスの不均衡、特にタンパク質やカルシウムの過剰摂取によって発症しやすくなると言われています。これらの原因によって、骨盤や大腿骨の発育不全、変形が生じ、股関節が緩くなることで様々な症状を引き起こします。

<症状>
靭帯断裂の直後は、膝の痛みによって肢に体重をかけることができず、足先をチョコンと地面につけるか、肢を挙げて3本足で歩くなどの症状がみられます。体重の軽い犬では、数日で症状は軽減します。体重の重い犬では、ある程度の症状の回復と再発を繰り返し慢性化します。慢性化すると、関節炎や変形性関節症(膝関節内で大腿骨と脛骨がぶつかることで骨の表面にトゲ状の突起物ができ、関節の動きの制限や痛みを引き起こす状態)や半月板損傷が起こることによって、膝の痛み、跛行(肢を気にして歩くこと)が持続します。また、片方の肢をかばう為に反対側の前十字靭帯に損傷が起こる場合もあります。

<治療・予後(今後の見通し)>
小型犬では安静にしておくと、その痛みは次第に落ち着き、多くの場合数週間後には元通りに歩けるようになります。
大型犬では外科手術が必要となります。手術以外の治療法としては、鎮痛剤や関節用のサプリメントによって痛みをある程度緩和できます。バランスの良い適量のフードと、適度な運動が肥満の予防と靭帯の強化につながります。膝蓋骨脱臼(膝の皿の骨の脱臼)を患っている犬は、適切な管理を行い、靭帯断裂を予防すべきでしょう。大型犬や肥満犬は術後に体重管理、運動制限など適切な管理を行えば予後が良好ですが、再発には注意が必要です。

 

膝蓋骨脱臼(シツガイコツダッキュウ)

「膝蓋骨脱臼」は、後肢にある膝蓋骨(膝のお皿)が正常な位置から外れてしまった状態のことをいいます。膝蓋骨が膝の内側に外れることを内方脱臼といい、トイプードルやチワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、などの小型犬に多くみられます。膝蓋骨が外側に外れることを外方脱臼といい、大型犬に多くみられます。

<原因> 先天性と後天性に分けられます。先天性の内包脱臼が小型犬に多発します。
◆先天性による場合◆
生まれつき骨や筋肉、靭帯の形成に異常をもっており、加齢とともに進行することにより発症します。

◆後天性による場合◆
打撲や高いところからの落下などによる外傷性のものや、膝の手術の後などに発症する医原性のものがあります。

<症状>
脱臼の程度により、無症状のものから歩行困難など運動障害の起きるものまで症状はさまざまです。重症度によって4段階にわけられ、治療法を選択する目安となります。

<膝蓋骨脱臼のグレード分け・治療法>

 グレード  身体検査所見  骨格の異常  症状  治療法
 Ⅰ  強制的に膝蓋骨が脱臼する  最小限  多くは無症状   無治療
 Ⅱ   膝の屈曲で自発的に膝蓋骨が脱臼するが、すぐに戻る  軽度  時々びっこを引く   症状が出れば手術(主に脱臼の整復)が望ましい
 Ⅲ  常に膝蓋骨が脱臼しているが、戻すことが出来る   中程度  常にびっこを引く   手術(主に脱臼の整復)が必要
 Ⅳ  常に膝蓋骨が脱臼しており、戻すことが出来ない  重度  常にびっこを引く  手術(脱臼の整復と骨の矯正)が必要

特発性多発性関節炎

犬で認められる関節に炎症を起こす病気としては、感染が原因のものと、感染以外が原因であるものと大きく2つに分けられます。この感染以外が原因である関節炎は免疫抑制療法(免疫を抑える治療)により症状が改善することが多い為、免疫介在性多発性関節炎と呼ばれます。この免疫介在性関節炎の中で特に骨に病変は認めず、その原因となる明らかな病気がはっきりしないものを特に特発性多発性関節炎と呼びます。
この特発性関節炎は、犬の不明熱(発熱が続くが検査などで特に異常が見つからないもの)の原因として最も多いと報告されています。

<発生>
日本国内では圧倒的に小型犬に多いとされており、特に年齢や雄雌での発生の差はありません。猫での発生はごく稀です。

<症状>
熱が出る、肢を痛がって歩きづらい、関節を動かす事を嫌がる、元気や食欲が無くなるなどの症状が見られます。ただし、肢や関節を痛がらない場合もある為、病気に気づかれるまでに時間がかかってしまう場合があります。

<治療>
免疫を抑制する治療が必要になります。プレドニゾロンという薬が一般的に用いられます。初期治療が成功すると、薬を徐々に少なくし、最終的には微量の薬を投与し続けるか、薬を中断し、定期的な血液検査(炎症マーカーなど)で状態を確認しながら経過を観察します。

<予後(今後の見通し)>
プレドニゾロンによって上手くコントロール出来る場合が多いですが、最低でも半年間は治療を続ける必要があります。
治療が上手くいったとしても、薬の量を減らしたり止めたりすることで、その後に症状が再発したりすることもある為、注意が必要です。場合によっては生涯に渡っての治療が必要となる場合もあります。

 

変形性関節症

関節軟骨とは関節内の骨の表面を覆うクッションのようなものですが、関節を動かすことなどにより、関節軟骨が磨耗し、骨と骨が直接ぶつかるようになります。磨耗した軟骨やその周囲にはトゲ状の突起物が発生し、関節の動きの制限や、関節痛を引き起こします。このような慢性進行性の関節疾患を「変形性関節症」といます。肥満傾向の犬の発生率が高いと言われています

原発性変形性関節症:骨や関節に明らかな異常がなく、発症の原因が不明の変形性関節症の事を指します。老齢犬や、長い間同じ関節に負荷がかかるような運動をしてきた犬などによくみられます。しかし最近では、若齢の肥満傾向にある犬の発症例も増えてきています。
二次性変形性関節症:脱臼、骨折、股関節形成不全、前十字靭帯断裂、関節炎などが誘因となり、二次的に発症する変形性関節症の事を指します。原発性よりも発生頻度は高いといわれています。

<症状>
症状は主に痛みにより肢を気にして歩く、肢を挙げて歩く、立ち上がる動作や動くことを嫌がるなどですが、関節が腫れて歩行困難になることや、痛みが強いため元気や食欲が低下することもあります。

<治療>
・関節内の骨のトゲを取り除く手術によって症状を改善することが可能です(実施できる施設は整形外科を専門とする動物病院に限られています)。
・鎮痛剤や関節炎用のサプリメントで痛みを緩和する方法もあります。
・標準体重を超えている場合は減量することで症状がある程度緩和できます。
・バランスの取れた食事を与え(カルシウムの添加は栄養バランスを崩し、関節に悪影響を及ぼします)、過度な運動は控えることも重要です。

眼科

 

白内障

「白内障」とは眼のレンズである「水晶体」が白く濁る疾患です。

<原因・発生>
・犬では遺伝性、代謝性(糖尿病性)、老齢性白内障が多く、猫では炎症性白内障が多いといわれています。
・遺伝性白内障はアメリカンコッカースパニエル、トイプードル、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、シーズー、ミニチュアシュナウザーなどで多発し、2歳~6歳頃に発症します。
・代謝性白内障は糖尿病の合併症によって発症します。
・老齢性白内障は小型犬では10歳、大型犬では6歳以上で発症します。
・炎症性白内障はブドウ膜炎という眼内の炎症に伴い発症します。

<症状>
・水晶体が白濁し、視力が低下します。白内障が進行すると水晶体から有害物質が流出し、ブドウ膜炎という眼内の炎症が起こります。
・ブドウ膜炎(別紙参照)を無治療で放置すると、合併症である緑内障(別紙参照)を引き起こします。

<治療>
・外科手術によって、視力の回復が望めます。眼内の炎症がある場合や、網膜に異常がある場合は手術が不適応となります。手術は特殊な医療機器を用いて、水晶体の内容物を吸引し、人口レンズを挿入する方法が一般的ですが、眼科専門の動物病院でしか行えません。術後は眼の炎症をなどの合併症を防ぐために長期的な点眼が必要です(専門病院をご紹介します)。
・手術以外の有効な治療法はなく、白内障の進行を遅らせる点眼薬も効果は高くありません。

<予後(今後の見通し)・注意>
・手術を行い、術後の合併症を防ぐことができれば予後は良好です。
・網膜に異常がある場合は手術を行っても視力の回復は望めません。
・手術を行わずに点眼のみで治療を行っても、治癒することはありません。手術を行わない場合は定期健診を受け、ブドウ膜炎や緑内障の発症を見逃さないようにすべきです。

 

緑内障

「緑内障」とは眼圧(眼の内部の圧力)が上昇することで、網膜(眼の奥にある膜で、視覚に重要な部分)を傷害し視力を失う病気です。

<原因・発生>
原発性緑内障:眼の構造と機能的な異常によって、房水(眼を出入りし、眼に栄養を供給し、眼の老廃物を回収する液体)が眼内に停滞し、眼の圧力が上昇します。犬では遺伝や品種が関連していることが多いとされています。ビーグル、ハスキー、バセットハウンド、アメリカンコッカースパニエル、ダルメシアン、ダックス、シーズー、柴犬などに多発します。
続発性緑内障:ブドウ膜炎(別紙参照)、眼内腫瘍、網膜剥離などの眼の病気に続発して発症します。猫の緑内障はほとんどが続発性緑内障です。

<症状>
初期症状は、赤い眼、眼の表面の白濁、眼を痛がる・気にする、散瞳(瞳孔が開いている)、眼圧の上昇などですが、まもなく視覚が消失し、慢性化すると眼の痛みや盲目に加え、眼が大きく腫れます。さらに症状が進行すると水晶体の脱臼や眼内出血が引き起こされ、最終的には眼球が萎縮して眼球癆と呼ばれる状態に至ります。

<治療>
・初期に発見できた場合は、眼圧を下げるために点眼、内服、点滴などで集中治療を行い、視覚の消失を防ぎます。初期治療が成功した場合は、早期に眼科専門の動物病院で外科手術などの治療を行います。
・一度視覚を失うと、回復は不可能なため、慢性期の治療は痛みの緩和を目的とします。その場合は眼球の摘出術、義眼の挿入手術、点眼や内服での痛みを緩和します。
・続発性緑内障では可能な場合、原因となるもとの病気の治療も必要です。

<予後(今後の見通し)・注意>
・緑内障の予後は要注意です。早期発見早期治療が成功した場合も、外科手術で長期的に正常な眼圧と視覚を保持することは困難です。点眼や内服薬だけでの管理はより困難です。
・慢性期からの治療では、視覚の回復は不可能であり、眼球の摘出、義眼の挿入手術などで痛みを無くすことが治療の目的となります。
・片眼で緑内障が発症した場合、正常な反対側の眼の緑内障発症を予防することが重要です。

乾燥性角結膜炎

「乾燥性角結膜炎」は犬で最も一般的な角膜・結膜の病気です。免疫の異常によって涙の量が減少し、眼の表面が乾燥し、粘液状または膿のような目脂が目の表面に付着します。

<発生>
犬で多く発生しますが、猫ではまれです。

<症状>
涙の量が不足しているために眼の表面は乾燥し、慢性的に粘液状または膿のような目脂が眼の表面や眼の周囲に付着します。結膜(白目、まぶたの裏)は充血し、角膜(眼の表面の透明な膜)は白く濁ることや黒っぽい色素沈着が見られることがあります。眼の周囲には目脂が付着したことによる皮膚炎が見られることがあります。

<治療>
・免疫抑制剤の点眼が治療の中心となります。人口涙液やステロイド点眼薬なども用います。
・目の周囲に皮膚炎が見られる場合は治療を行う必要があります。

<予後(今後の見通し)>
多くの場合、免疫抑制剤の点眼で症状は改善しますが、点眼を中断すると再発するため、生涯点眼を続けなければなりません。

 

第3眼瞼腺脱出(チェリーアイ)

第3眼瞼腺の脱出は1歳未満の犬で多く認められる疾患です。
第3眼瞼腺(眼の鼻側に存在する涙を分泌する腺)が第3眼瞼(眼の鼻側に存在するまぶた)の端から飛び出した状態です。
飛び出した腺は小豆大に腫れて赤くなる為、チェリーアイと呼ばれます。

<原因・発生>
通常、第3眼瞼腺は第3眼瞼の奥の眼窩と呼ばれる位置に線維性付着物によって固定されています。犬や猫では品種によりこの付着が弱く第3眼瞼腺が脱出しやすくなっています。犬ではビーグル、コッカースパニエル、セントバーナード、ボストンテリア、ペキニーズ、シーズーなどに多く認められます。猫ではまれですがバーミーズ、ペルシャで認められる場合があります。

<症状>
多くは両眼に起こりますが、片眼だけに生じることもあります。
第3眼瞼が長時間脱出したままでいると刺激により涙が出たり、腺組織が充血したり腫れたりする場合があります。

<治療>
・治療は内科療法と外科療法があります。
・内科治療では脱出した第3眼瞼腺をもとの位置に押し戻し、露出した粘膜に対する感染や炎症のコントロールの為に抗生剤や消炎剤の点眼薬を使用します。
・外科治療では脱出した第3眼瞼腺をもとの位置に戻して縫合します。

<予後(今後の見通し)・注意点>
・症状が軽度であれば内科治療によりしばらく症状が落ち着きますが再発する場合も多いです。
・外科治療による予後は良好ですが、腺の炎症が強かったり、感染が生じていた場合にはまれに再発が認められる場合もあります。

 

マイボーム腺機能不全

マイボーム腺とは眼瞼(まぶた)の裏にある、脂を分泌する腺のことです。
分泌された脂は、眼球の表面を覆い、涙が眼からこぼれるのを防ぐ油膜となります。
「マイボーム腺機能不全」は脂の分泌が不足して油膜が機能せず、涙が眼からこぼれ落ちやすくなる病気です。

<発生・原因>
細菌や酵母菌の感染によって、マイボーム腺が閉塞することや、感染を伴わずに脂栓がマイボーム腺に閉塞することが原因です。若齢から高齢まで、多くの犬種で発生します。

<症状>
慢性的な涙症が主な症状です。慢性的な涙症によって、眼の周囲の被毛の色が変色します。
放置すると涙でぬれた部分に皮膚炎が起こります。マイボーム腺の感染によって眼瞼炎が起こり、眼瞼が赤く腫れることもあります。

<治療>
・眼瞼を温め、眼を開閉するマッサージを行うことで、脂栓の閉塞を解除し、脂の分泌を促すことが可能です。
・油性眼軟膏を点眼し、油膜を作ることが可能です。
・眼瞼炎を併発している場合は、抗生物質や抗真菌剤の内服薬が必要です。
・被毛の変色や皮膚炎を防ぐために、こぼれた涙をこまめにふき取る必要があります。

<予後(今後の見通し)>
マイボーム腺閉塞の原因は体質的問題が多いため、上記の治療により症状の緩和は可能ですが、完治することはなく、一生涯にわたり温マッサージや油性眼軟膏の点眼が必要になります。併発した眼瞼炎や皮膚炎は適切な治療を行えば治癒します。

 

ブドウ膜炎

ブドウ膜とは虹彩(瞳孔の大きさを調節する黒目の周辺部分)、毛様体(黒目と白目の境界部分)、
脈絡膜(眼球の周囲を覆う膜)から成る眼内の構造物です。ブドウ膜の炎症をブドウ膜炎といい、合併症の緑内障を引き起こすことがあります。

<原因・発生>
ブドウ膜は血管が豊富であり、全身性の感染症や免疫疾患の影響を受け、ブドウ膜炎が発症することがあります。外傷や角膜潰瘍などで体外から感染を受け炎症を引き起こすことや、白内障に続発し発症することもあります。眼内の腫瘍やリンパ腫の影響から発症することや、特発性ブドウ膜炎という原因不明のものもあります。

<症状>
ブドウ膜炎は虹彩に起こることが最も多く、前ブドウ膜炎といいます。前ブドウ膜炎の症状は、角膜(眼の表面の透明な膜)の白濁、縮瞳(瞳孔が小さい)、眼が赤い、眼を痛がる・気にする、涙が増える、前房(角膜と瞳孔の間の透明な部分)の濁り、眼圧の低下などです。重大な合併症である緑内障(別紙参照)を併発すると、眼圧が上昇し、眼が激しく痛み、失明する事もあります。

<治療>
・散瞳剤(瞳孔を広げる薬)の点眼、消炎剤の点眼と内服などで治療を行います。
・全身性感染症や免疫疾患が原因の場合はその疾患の治療が必要です。
・外傷や角膜潰瘍、白内障などが原因の場合は、炎症を抑えた後、それぞれの治療を行います。

<予後(今後の見通し)・注意点>
・予後は原因によりますが、早期に適切な治療を行い、原因となる疾患を治療できた場合の予後は良好です。
・治療が遅れ、緑内障を併発した場合の予後は要注意です。無治療で放置すると、視力の喪失や眼球の萎縮が起こることもあります。

眼瞼炎

眼瞼炎とは眼瞼(眼の周囲の皮膚)が炎症を起こしている状態で、特に犬で多くみとめられます。全身性の皮膚疾患に関連して発生する場合があります。

<原因・発生>
原因としてはアレルギー性(ワクチン接種、薬物、食物など)、感染性(細菌、真菌、寄生虫など)、免疫介在性、外傷、腫瘍などが考えらえます。細菌性眼瞼炎は子犬から若齢の成犬、また免疫機能が低下している子で多く発生が見られます。

<症状>
眼瞼炎の症状は眼の周囲の皮膚やまぶたの内側が赤くなり腫れる、眼を痛がる・気にする、眼を閉じ気味になる、涙が多いなどです。気にして擦ることで眼球に傷がついたり、まぶたの周囲が脱毛したりする場合もあります。症状は片眼だけの場合もあれば両眼に発生することもあります。原因を特定する為に麻酔をかけて一部の皮膚を切除し、検査センターに検査を依頼することが必要となる場合があります。

<治療>
・原因が特定された場合はその疾患の治療が必要です。
・細菌性眼瞼炎の場合には抗生剤の点眼薬および内服薬の使用にて治療します。
・いずれの場合もエリザベスカラーを装着し、眼をこする・掻くなどを防ぐ必要があります。

<予後(今後の見通し)・注意点>
・予後は原因により様々です。
・細菌性眼瞼炎の場合は早期に適切な治療を実施できた場合の予後は良好です。

 

潰瘍性角膜炎(角膜潰瘍)

角膜とは眼球表面の透明な膜であり、主に外傷によって角膜が損傷する疾患を、「潰瘍性角膜炎」といいます。

<原因・発生>
ケンカによって他の動物の爪が眼に当たる、自分で眼を掻く、敷物などで眼をこするなど外傷性の原因が多く、逆さまつげや瞼(まぶた)の内反(眼球に触れるように内側に反転する状態)などが物理的な刺激になって起こることもあります。ウイルスや細菌感染が原因となることもあります。
シーズーやペキニーズなどの眼が大きく飛び出た犬種に多発します。

<症状>
表層性角膜潰瘍:外傷による角膜表層の浅い傷によって起こり、眼を痛がって開けない、眼をしょぼしょぼする、眼の充血などの症状が見られます。
中層性・深層性角膜潰瘍:外傷による深い傷や感染によって起こり、表層性角膜潰瘍と同様に眼を痛がる症状が見られます。深層性の場合は角膜深部のデスメ膜(角膜の一番奥を覆う膜)が傷から膨らむように出てきます。

<治療>
・表層性の場合は抗生物質と傷を修復するための点眼薬で治療し、3日前後で治癒します。
・中層性・深層性の場合は傷の縫合や結膜などで傷を覆い修復を促す手術が必要な場合があります。手術を行わない場合は自家血清(犬自身の血液を採取し、血液中の透明な液体成分を分離します)の点眼や抗生物質などの点眼が必要です。
・感染が原因の場合は抗生物質の内服も必要となります。
・いずれの場合もエリザベスカラーを装着し、眼をこする・掻くなどを防ぎます。

<予後(今後の見通し)・注意点>
表層性角膜潰瘍の予後は良好です。傷が深いほど予後は注意となります。
感染性の場合も予後は注意です。点眼後など眼を気にして、自分で掻く、敷物にこすり付けるなどで新たな傷ができることがあるので、エリザベスカラーをつけていない場合は注意が必要です。

 

難治性角膜上皮びらん

角膜上皮は角膜の一番外側にあたる部分です。角膜の傷でもっとも損傷が浅く、この角膜上皮のみが欠損した状態が角膜上皮びらんです。
このなかでも特に治療を実施しても治らない、あるいは一時的に治ってもすぐに症状の再発が見られる場合を「難治性角膜上皮びらん」と呼びます。

<原因・発生>
はっきりとした原因は解っていませんが、角膜上皮とその下に存在する角膜実質とをつなぐ基底膜細胞の異常が原因ではないかと言われています。
中年齢以降の犬での発生が多く、角膜上皮びらんが1~2週間以上治療を実施しても改善しない場合にこの疾患の可能性が疑われます。
その他の原因として、睫毛の生える位置の異常や乾性角結膜炎、猫ではヘルペスウイルス感染によって慢性的な角膜上皮の欠損が生じる場合があります。

<症状>
眼を痛がって開けない、眼をしょぼしょぼする、眼の充血などの症状が見られます。
慢性化すると痛みが消失し、肉芽と呼ばれる再生組織が形成される場合があります。

<治療・注意点>
・初期の角膜上皮びらんの原因が特定出来た場合にはその治療を実施します。
・原因がある場合にはその治療と同時に、また原因が不明な場合には滅菌した綿棒を使用し遊離した角膜上皮の除去を行います。この処置は点眼麻酔により実施出来ます。一度の治療で治癒しない場合には繰り返しの処置が必要となる場合もあります。
・慢性化していたり、綿棒による処置で治癒しない場合には、注射針を使用した角膜格子状切開術などを行う必要があります。この処置には全身麻酔が必要です。
・抗生物質の目薬を使用し感染を防止します。
・必要に応じて治療用のコンタクトを使用する場合もあります。
・いずれの場合もエリザベスカラーを装着し、眼をこする・掻くなどを防ぎます。
・これらの治療を実施することで角膜上皮は再生し、治癒することが多いですが、再発する事も少なくない為、その後の経過には注意が必要です。

誤食

チョコレート中毒

チョコレート中毒はチョコレートの材料であるカカオに含まれるテオブロミンという化合物によって引き起こされる中毒です。

<発生>
テオブロミンは、主に中枢神経(脳や脊髄)、心臓血管、腎臓、骨、筋肉といった臓器に作用し興奮させます。人間と比較すると犬や猫ではその排泄に時間がかかる為、中毒が発生しやすいとされています。小型犬では板チョコ1枚で深刻な症状となる可能性があります。カカオ含有量の高いビターチョコレートほど危険です。ホワイトチョコレートではカカオ含有量が低いため中毒症状は出にくいです。

<症状>
嘔吐や下痢、興奮状態になったり、パンティング呼吸(繰り返しはーはーする呼吸)が認められたり、おしっこの量の増加もしくは排尿が出来ない、筋肉の振るえなどが認められる場合があります。最悪の場合は死に至る場合があります。

<治療>
食べてから時間があまり経過していなければ、催吐処置(強制的に吐かせる処置)を実施します。食べた量が少量であれば中毒症状が出ない場合もありますが、少しでも体内への吸収を防ぐ目的で実施することが勧められます。ただし、チョコレートは胃の中に入ると解けて粘度が高くなる為、催吐処置では効果的で無い場合もあり、その場合には胃の中にチューブを設置し洗浄を行います。
その他の治療として、吸着剤の使用や点滴を実施する場合もあります。
食べてから時間が経過し何らかの症状が認められている様な場合には、その症状に応じた治療が必要となります。

難産

 

出産について

<難産の判定基準>
1. 交配から67日を過ぎるが、出産の兆候がない
2. 体温が下がってから24時間を過ぎるが、出産の兆候がない
3. 20分以上強い陣痛が続くが、胎児が出てこない
4. 2時間以上弱い陣痛が続くが、胎児が出てこない
5. 分娩の間隔が2時間以上続くが、次の出産が始まらない
6. 破水して15分以上過ぎるが、胎児が出てこない
7. 胎児の手だけ出てきているが、体が出てこない(産道で詰まっている)
8. 胎児が出てくる前に深緑色の分泌物や血液が陰部から出てくる
9. 母親の状態が急激に悪化

上記の1つでもあてはまれば、すぐにガーデン動物病院にご連絡ください。

<出産までの準備>
① 交配から55日目ごろから1日3回体温を測定してください(おしりで測ります)。犬の平熱は38度ぐらいですが、37.2度以下に下がれば24時間以内に分娩が始まります(交配から59から64日ごろ)。体温が下がれば当院に連絡をしてください。

② 出産が近くなると母犬は出産の準備を始めます。母犬は落ち着きがなくなり、寝床を作ったり、呼吸が速くなったり、頻繁におしっこをしたり、食欲がなくなったり、時には嘔吐することもあります。

③ いよいよ分娩が近づくと、弱い陣痛が始まり、お腹に力を入れ呼吸が速くなったり、休憩したりを繰り返します。陣痛が強くなると15分以内に胎児が出てきます。この間は母犬が神経質になっているため、あまりかまい過ぎないようにしてください。

④ 1匹の胎児が出で来るごとに、続いて胎盤が出てくるのが理想です。次の出産まで10分から2時間ぐらい母親は休憩します。そしてまた、陣痛が始まり、次の胎児を出産します。胎盤の数と胎児の数が同じであることを確認してください。

⑤ 出産がすべて終了したら、仔犬が母乳を飲むこと、母犬が仔犬の体を舐めおしっこやウンチをさせることを確認してください。出産した日の母乳には母親の免疫が混ざっているので仔犬の健康には不可欠です。仔犬の体温は不安定なので、部屋の温度に注意してください(25度前後に保つ)。出産後2,3日以内に仔犬と母犬を連れてガーデン動物病院にご来院ください。仔犬の健康診断とその後の注意点などをお話します。

その他の疾患

若齢期低血糖症(ジャクレイキテイケットウショウ)

若齢期低血糖症は、生後3ヶ月以内の犬猫で一過性の症状として認められます。通常は低体温、嘔吐や下痢、飢餓、ストレスなどが原因となって発症する事が多いです。

<原因>
脳が活動するためには、エネルギー源としてグルコースが必要です。動物は、食餌からグルコースを摂取することが出来ますが、使用しなかったグルコースを肝臓や筋肉といった臓器にグリコーゲンという形で貯蔵しています。そして食餌を食べていない時に体にグルコースが必要になると、それを分解して使用することが出来ます。新生児や若齢の動物ではこのグリコーゲン貯蔵能力が未発達な為、おとなの動物と比較すると低血糖症が発生しやすくなります。特に小型犬や猫での発生が多く見られます

<症状>
元気消失、歩行困難、全身性のけいれん、昏睡などが主に認められます。
低血糖状態が長時間続くと脳へ後遺症が残り、意識障害が回復しない可能性があります。

<治療・注意点>
・自宅で子犬が低血糖症による発作を起こした場合には、ただちに砂糖水やガムシロップのようなグルコース(ブドウ糖)を含む液体を口から与えてください。発作を起こしている子に与える場合、咬まれる可能性がある為、注意しながら与えてください。また、一気に大量に与えようとすると気管に入る恐れがある為、十分に注意しながら少量ずつ与えてください。通常は1~2分程度で効果が現れます。発作が落ち着いたら速やかに病院を受診して下さい。
・口からグルコースが与えられないもしくは与えても状態が改善しない場合にも速やかに病院を受診して下さい。
・病院では点滴によりグルコースを投与する治療を実施します。自分から食餌を食べることが出来るようになるまでは入院が必要となります。
・速やかに治療が実施され、その効果が認められれば予後は良好です。ただし、その後はそれまでの食餌方法を見直して頂くことが必要となります。

 

臍ヘルニア 鼠径ヘルニア

「臍ヘルニア」とは俗に言う「出べそ」のことです。胎児は臍(ヘソ)の緒の中を通っている血管が母親とつながっており、その血管から栄養をもらいます。出生後、臍の緒は切れますが、新生児の臍には臍の緒からつながっていた血管などが通る穴が開いており、成長とともにふさがります。その穴のふさがり方が不完全な場合、腹腔内の脂肪や臓器が臍の穴から皮下まで脱出します。これが「臍ヘルニア」です。
内股の部分には、腹腔内の太い血管から枝分かれしてきた血管や、脊髄から枝分かれしてきた神経を後肢に通すための小さい穴が開いています。その穴が先天的に大きい場合、腹腔内の脂肪や臓器が内股の穴から皮下まで脱出します。これが「鼠径ヘルニア」です。

<原因>
臍ヘルニアと鼠径ヘルニアはいずれも先天的に発生する遺伝性の疾患です。まれに、外傷などで臍や内股の穴が広がることで、後天的に起こることもあります。

<症状>
多くの場合は無症状です。脱出した脂肪がねじれ、押しても腹腔内に戻らない場合は、脂肪が壊死(組織が傷害され、細胞が死んでしまうこと)し、痛みを伴うことがあります。腹部臓器が脱出した場合は、脱出した臓器に関連した症状が見られます。

<治療>
手術によって、開いている穴を塞ぎます。脱出した脂肪がねじれ、壊死した場合や、腹部臓器が脱出した場合は、早急に手術が必要です。無症状であり、脱出した脂肪が押してすぐに腹腔内に戻る場合は、予防的な手術を行うことが推奨されています。

<予後(今後の見通し)>
鼠径ヘルニアは多くの場合、成長とともに穴が塞がり、組織の脱出は起こりにくくなります。臍ヘルニアは成長過程で治癒することはまれですが、多くの場合予後は良好です。いずれのヘルニアも脱出した腹部臓器が壊死した場合などは注意が必要です。